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乳母車 ( ノンHです )

乳母車

 今、赤ちゃんを運ぶ車というと、ベビーカーなんて呼ばれてる
けど、僕が赤ちゃんだった頃、それは乳母車だった。
 多くの方がご存知ないと思うので説明しとくね、この乳母車は
今の椅子式とは違って寝台式。赤ちゃんはベッドで寝ている時と
同じ姿のままお外に連れ出されることになる。
 籐製の大きな籠に四輪の車を付けた姿で、ご丁寧に日よけの幌
まで着いてたから、とにかくがたいがでかいのだ。
 当然、電車バスには乗れなくて、もっぱら近くの公園なんかへ
お散歩する時にだけ使われていた。
 ずっと以前『北風ピューピューさんは暖かい』という話をした
けど、あの時乗っていたのが、この乳母車なんだ。
 実はこの寝台けっこう快適で、両脇にある籐の壁が外気を防い
でくれるのでお外を移動中でも外気の影響をあまり受けない。
 おまけにうちのお母さんときたら途中で買い物した品物なんか
までここに放り込んでしまうから、僕は日用品に周囲を囲まれて
帰宅することになるだろう、なおのことお外とは隔絶してたんだ。
 おかげでお母さんが「今日は北風さんがピューピューしていて
寒いわね」なんて僕に話しかけても何の事だかわからなかった。
 ただ、お母さんが「北風ピューピューさん」と言っているから
それが欲しくなって、「僕も、北風ピューピューさん」と言って
青空に向かって両手を差し出してみると……。
 それを見たお母さん、何を思ったのか吹いて来る北風を口いっ
ぱいに含んで、それを僕のほっぺにピューピューって掛けてくれ
たんだ。
 それは、とっても暖かくて赤ちゃんの僕はご機嫌さんだった。
 そこで『北風ピューピューさんって暖かい風なんだ』と思った。
 それが後日、『暖かい風は南から吹くってことは……北風は、
北から吹く風じゃなくて、北へ向かって吹く風のことなんだ』と
勝手に誤解した原因だった。
 その誤解が解けたのは『北風ピューピューさん』から10年も
経ってからのお話。
 もうその頃にはこの籐製の乳母車は納屋で埃を被ってた。

*************************
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幼年司祭 (後編)

 後編

 「じゃあ、いくよ」
 私はカレンに一声かけてショーツを下ろす。

 すると、そこに二つの大きな桃が現れた。

 これ世間的な常識からすれば、思春期の女の子が男にパンツを
脱がされたんだから、カレンだって『ワー』とか『キャー』とか
言いそうなものだが、彼女は驚いた様子すら見せなかった。

 でも、それがこの村ではむしろ常識。

 カレンに限らないが、子供のお尻叩きが習慣になっているこの
村にあっては、子供たちもそのことに慣れっこで、大人たちから
「パンツを脱いで」と命じられれば、何のためらいもなく脱いで
しまう。それは外の世界で例えるなら、予防注射で二の腕を出す
のとたいして変わらなかった。

 ただ、私が最初の一撃をぷりぷりした桃の上に振り下ろすと、
健康的な色艶をしたお尻がぷるんと震える。

 「いやあ、痛い!……痛いでしょう!もっとやさしくしてよ」
 カレンが私に文句を言ってきた。
 ここのスパンキングはこんな感じなのだ。

 私は、心の中で……
 『ほら、だから言わんこっじゃない』
 と思い笑ってしまった。

 「優しくしてるよ」

 「嘘よ!だって、とっても痛いじゃないの!昔は……そのう…
…パンツを脱いだ時は、もっとやさしくかったよ」

 カレンが思わず口ごもったのも微笑ましかった。パンツを実際
に脱ぐことよりそれを口にする方が恥ずかしいのだ。

 「だから、優しくしてるじゃないか。手首のスナップだって、
あまりきかしていないんだから……」

 「だってえ~~」
 カレンは不満そうだ。

 「カレン、君が痛いと感じるのはね、ここ最近、君がお仕置き
を受けていないからさ。きっとお尻への痛みを忘れちゃったから
今がとっても痛いって感じるんだよ」

 「え~~そんなことないよ」

 「そんなこと、あるの……ほら、もう一ついくよ」
 私は二発目を準備して発車する。もちろん、この時もそんなに
強くぶったつもりはなかった。
 ところが……

 「痛~~~~い」
 カレンはまたも大きな声を上げる。少し鼻にかかった甘えた声
だ。

 「しょがないなあ、そんなに痛かったら60回なんて、とても
もたないよ。じゃあ、いっそのこと鞭にするかい?その方が痛い
けど、短時間で済むからね」
 私は勧めたが……

 「いや、鞭はいや。こっちの方がいいもん」
 カレンは首を振ってきかない。まるで駄々っ子。

 『やれ、やれ』
 である。

 私の経験で言うと、総じて女の子というのは、膝の上で身体を
これでもかというくらい強く拘束された上に平手で叩かれるのが
お気に入りのようだった。

 もちろん、幼い頃は単純に『ぶたれないにこしたことはない』
と考えてるみたいだが、15歳を過ぎる頃からその気持が微妙に
変化してくるのがわかる。

 『お仕置きは怖い』『絶対に嫌だ』と思いつつ、心のすき間の
どこかで、誰か心安い人になら自らすすんでお尻を叩かれたいと
願う心が芽生えてくるのだ。
 それはたいてい、膝の上で、身体をきっちきっちに拘束されて、
平手で、むき出しとなったお尻を激しく……という願いだった。

 もちろんそんな本心は誰にもあかさないが、女の子の世界では
こうした心の変化は珍しくない。
 そして、その心安い人に私が選ばれることも少なくなかった。

 今回はどうやらそういうケースではないかと察しをつけたので
ある。

 つまり、幼児の頃に戻りたい、かまって欲しいというのが本心
なのだから、ただ単にテーブルにうつ伏せになって、その衝撃に
耐えるだけの鞭の懺悔ではもの足りなかったのだ。

 「しょうのない子だ、だったら、スパンキングでいくけど……
この先、お尻が痛くなっても容赦しないからね」

 私は宣言すると、カレンが小さく頷くから、再び可愛いお尻に
狙いを定めて……

 「ピシッ」

 「あっああああ」
 とたんにカレンの口からくぐもった声が出た。

 その瞬間、カレンは自分の体を私の膝に目一杯巻きつかせ締め
上げ、あげく、私の足首まで握るのだった。

 しかし、これを単純に演技と言ってはいけないだろう。
痛いのは、本当に痛いのだから。

 「ピシッ」
 「ひぃ~~~」

 ただその痛みは、幼い頃のように単なる絶望ではない。身体が
大きくなって少しぐらい痛みには耐えられるようになったカレン
の心の奥底では、これまでの恐怖、激痛、絶望、だけではない、
不思議な情動、不思議な心地よさも芽生えているに違いなかった。

 原理はパブロフの犬と同じ。鈴の音自体は何ももたらさないが、
その音を聞くと食べ物を想起してよだれが出る。あれと同じで、
幼児の頃というのは、お尻へ叩きだけ取ると苦痛でも、その前後
には、沢山の幸せが散りばめられている。例えば、お仕置き前に
やった悪戯や悪ふざけの快感、お仕置き後に受けた母からの抱擁
など、楽しかった出来事の中に挟み込まれてお仕置きは存在して
いるのだ。

 もちろん自分が幼児の頃にはそんなこと爪の先ほども思わない
が、成長するにつれ日々色んなストレスを抱え込むようになると、
幼い日の出来事が何もかも妙に懐かしく感じられて、お尻叩きと
いう本来なら嫌な出来事までもが楽しい記憶にすり替わってしま
う。人間とは不思議な生き物だ。

 故意か無意識かは分からないがカレンも年頃、そんな大人の夢
を見ているとしても不思議ではなかった。

 ただ、現実は甘くない。
 「ピシッ」

 「いやっ!」
 カレンが思わずお尻をひねる。
 これはお尻に受けた衝撃を少しでも逃がしたいという本能的な
動きだ。

 こうなると、体を少し支えてやらなければならない。

 「いやあ」
 カレンが思わず叫ぶ。
 私の左手が腰の辺りを締め付けたのに驚いたのだろう。

 「嫌じゃないよ。神様への償いだもの、ちゃんと頑張らなきゃ。
……まだ一割も終わっていないんだからね。そもそも、こんなに
大きくなった子が悲鳴なんてみっともないよ」

 「だって、昔はこんなに痛くなかったもん……」
 
 「何、泣き言言ってるんだ。当たり前じゃないか。小学生相手
に本気でぶつ大人はいないよ。でも、今の君は小学生じゃない。
身体だって大きくなったし、分別だってあるだろう?小学生の時
よりずっとずっと我慢できる子が、同じお仕置きってはずがない
だろう」

 「え~~そんなあ~~~」

 「そんなはずじゃなかったかい?それとも、私はやさしいから
高校生なった今でも小学生と同じ強さでぶたれると思ったの?」

 「それは……」

 「平手のお仕置きをバカにしちゃいけないよ。これでも、随分
加減してるんだ。本気でやったら、大人だって泣くんだからね」

 「え~~~うそ~~~」

 「嘘なもんか、目一杯スナップをきかせたら、君だって3発で
私の膝を飛びのくぞ。……どう?やってみようか?」

 「いや、やめて」
 カレンは身の危険を感じたのだろう、叩かれる前に私の膝から
下りてしまう。

 ここでは償いの最中に勝手に膝を下りたら最初からやり直しと
なるルールだ。

 カレンはそのことにあとで気づいたみたいだった。
 その瞬間『しまった!』という顔になって私を見つめる。

 どうやら、今回の事はあまり深く考えずに体が勝手に反応した
ようだった。
 それが証拠に私と一瞬目を合わせただけですぐに俯いてしまう。
 ちらっと見たその顔には『まずいなあ』と書いてあった。

 「いいかい、カレン。償いは私に対してやってるんじゃない。
知恵も、力も、霊力も、何一つ問題にならないほど偉大な神様を
裏切ったことへの償いなんだ。だから、君がどんなに頑張っても
償いきれなるわけないんだけど、神様は人間の弱さをよくご存知
だからね、君ができる限りのことをするなら、許してあげようと
なさってるんだ。だから目一杯反省の気持を示さなきゃ」

 「…………」

 「これ、わかってるよね?」

 「はい……ごめんなさい」

 「そうやって考えた時、君の償いってこれが目一杯なのかな?」

 「……それは……」

 「君はこんな大きな体をしているのに、小学校レベルの試練で
許してもらえれると思ってるみたいだけど……君が小学生の時は
あれでも死ぬほどキツイ試練だったはずだよ。だから、あの時は
あれで許されたんだ。……だけど、今の君は違うよね?」

 「はい、ごめんなさい。私が悪るうございました」

 この『私が悪うございました』という表現は、今どきちょっと
古風な言い回しだが、この村では子供が使う最大級の『ごめんな
さい』だ。

 「分かってくれたみたいだね。鼻歌交じりで耐えられる程度の
ことをしても償いにはならないんだよ」

 「はい……」

 「よろしい、だったら、君の償いがこれからうまくいくように
マーサとお母様に手伝っていただこうか?その方がいいだろう?」

 「えっ!!……それは嫌です!」
 下を向きっぱなしのカレンだったが、その時だけは慌てたよう
には椅子に腰を下ろした私の顔を見据える。

 思わぬカレンの拒否。
 しかし、それは叶えてあげられなかった。

 償いの最中、自らの意思で私の膝や鞭打ち用のテーブルに残れ
ない子は、その後は拘束されて償いを続けることになるのだ。

 カレンは上目遣いに私の再考を求めていたみたいだったが……

 「………………」
 私が黙ってしまい、応じないとみると……

 「ごめんなさい」
 少し間があって、小さなボソボソっとした声が聞こえる。
 可哀想だが仕方がにかった。

 カレンは女の子。それも、そろそろ世間ではヤングレディーと
呼び習わされるような年頃なってきている。だから小学生時代の
ように何かにつけて泣き叫びさえすれば大人たちが勝手に手加減
してくれるというわけにはいかないのだ。

 ヤングレディーには償いの最中といえどそれなりの振る舞いが
求められる。
 そんな気遣いを覚えさせるのも躾の一つであり私の仕事だった。

 「大丈夫かい?……何ならやめてもいいよ。無理強いはしない
から………次の日曜日、子供ミサでここでやったのと同じ償いを
すればいいんだから、そっちでもいいんだよ」

 私がちょっぴり意地悪そうに水を向けると……
 カレンは激しく首を振る。

 「………………」

 今、私の目の前に立っているカレンはパンツを膝小僧のあたり
に引っ掛け、スカートの裾を申し訳なさそうに引っ張り下ろして
いる。

 その申し訳なさそうな様子がおかしくて思わずほっこり。頬の
あたりがゆるんだ。

 「よし、では、しばらく休んでからやろうか」
 私がこう言うと、隣の部屋で様子を窺っていたマーサがすぐに
入って来て、カレンの両肩を背中から捕まえると、祭壇の前へと
連れて行く。仕事とはいえ、その手際の良いことには驚かされる。

 「…………」
 カレンも抵抗する暇がなかったと見えてマーサのなすがまま。
 パンツが両足に絡みつき歩きにくそうだったが、それも仕方が
なかった。

 「さあ、ここでしばらく反省なさい」
 マーサの声に反応するかのように、カレンは鼻をすする。

 古いゴブラン織りの敷物に膝まづかせ、祭壇に向かって祈りを
捧げる姿は先ほどと同じだが、今度はマーサによってスカートが
捲り上げられたため、少なくとも大人たちからは、可愛いお尻が
強調される形で丸見えになっていた。
 その姿は全裸以上にエロチックだ。

 カレンは女の子なんだし、こんなことされてさぞやショックだ
ろうと思われるかもしれないが、私の経験で言わせてもらうと、
女の子はこうした事にあまり応えていない子の方が多かった。

 女の子というのは、最初こそ必死になって抵抗すものの、実は
慣れるのがとても早いのだ。私の膝でむき出しのお尻を叩かれて
いるうちに、さっさと今ある現実に順応してしまい、無駄な抵抗
はしなくなる子が多かったのである。

 今、唇が微妙に動いているカレンも、おそらくは自分を悲劇の
ヒロインに仕立ててお気に入りの夢をみているに違いなかった。

 悲劇の現実を夢物語にすりかえることで、ショックをいくらか
でも和らげようとするのは、女の子の常套手段。中には、頭の中
で思い描いた物語のセリフを思わず口にしてしまう子もいた。

 それともう一つ、周囲にいるのが私とマーサ、それに少し遅れ
て部屋にやって来たお母さんも一緒だというのが彼女には心強い
はずで、後で何かと話題にされてしまう同級生が近くで見ている
子供ミサでのお仕置きに比べれば、こちらの方がグンと心の負担
が少ないのだ。

 「よろしいですか、では始めますよ」

 コーナータイムは10分くらい。
 私の一声で、マーサと母親がカレンを私の前へと連れて来る。

 その姿はいつぞや見た大人二人に両脇を抱えられた宇宙人の絵
とイメージがダブってしまい、どういう表情をしてよいものかと
いつも迷ってしまうのだ。
 スカートの裾は持ち上がったままショーツは膝に下がったまま
で、当然、割れ目も茂みも隠せないままという他人には見せられ
ないような惨めな姿なのだが、それでもカレンは悲鳴を上げたり
その場にしゃがみ込んだりはしなかった。

 しかし、ほどなく男である私の視線に気づいたのだろう。
 その瞬間、みていた夢から醒めたのか、思わず二人の介添え役
の手を振りほどくと、その場にしゃがみ込んでしまう。

 「ほら、ほら、何、恥ずかしがってるの?カレンちゃん。……
自慢じゃないけど、このおじさんは君のそこを見るのは、これが
初めてじゃないんだ。……恐らくお医者様よりたくさん君の姿を
見てきたはずだけど……昔のことは忘れたかい?」

 こう言ってみたがカレンは頭を左右に激しく振るだけ。彼女の
羞恥心を溶かす役にはたたなかった。
 しかし、実際、10歳から13歳までの頃はそうだったのだ。

 実は、学校では月に一度、健康診断や発育状態の確認のため、
あるいは虐待の有無などについて調べる為に、子供たちの身体を
隅々までチェックする。つまり女の子も幼い時からお仕置きとは
別にお医者様の前では定期的に素っ裸にされているのだ。

 ところが、ローティーンの年頃に限って言うと、女の子たちは、
そのお医者様以上に、親や教師、それに私などからもお仕置きを
受け続ける。その終わりには必ず全裸にされて、虐待のこん跡が
ないかどうかチェックされていた。

 つまり、私はこの村に生まれた女の子の大半を裸にして眺めて
きたと言っていい。それはカレンにしても例外ではないわけで、
だからこそ『何を今さら恥ずかしがるのか?』ということになる
のだった。

 ただ、それが女の子には通用しない理屈だというのも重々承知
していたから、ここは何も言わずに、ただその時期を待つことに
なる。


 しばらくして、カレンはしゃがみ込んだ場所から上目遣いに、
私とは視線を合わせないような形で私の顔を盗み見るように……。
 心が少しだけ解きほぐれかけた兆しだ。

 「私はお医者様より信用できないかい?」

 「…………」
 私の問いにカレンは首を横に振る。

 「だったら、いらっしゃい」
 私はイスに座った自分の膝を叩く。

 これは、私の膝の上で裸のお尻を見せてうつ伏せになりなさい
ということ。
 時間はかかったが、そうするしかなかったのだ。

 カレンの重い腰がやっと上がる。
 再び、私の膝の上で同じ姿勢になったわけだが……
 今度は、母がカレンの両手を、マーサが両足を押さえてくれる
ことになった。

 こうして、償いの儀式は再開される。

 「ピシッ!」
 「いやあ、痛い!」

 さっそく声が出た。
 しばらくお尻を冷ましていたから、逆にぶたれていた時以上に
痛みを感じるのだろう。

 「ピシッ」
 「いやあ~~だめえ~~」

 カレンは、思わず火のついたお尻を右手で防ごうとして身体を
ひねってみたのだが、この時すでに両方の手はともに母によって
戒められているから使えない。
 もがくだけの不自由な体で、今、自由になるのは悲鳴を上げる
口だけだった。

 「ピシッ」
 「ごめんなさい、もうしません」

 「ピシッ」
 「いやあ、痛い、痛い、痛い」

 スナップをきかせた大人のスパンキングは、それまでカレンが
受けてきた十分に手加減されたものとは違って、まるでゴムの鞭
(パドル)でぶたれているような衝撃なのだ。
 思わず、目一杯の力で体をひねってみるも、大人二人に押さえ
込まれた身体はどうにもならない。

 「ピシッ」
 「ぎゃあ~~~だめ~~~」

 「ピシッ」
 「死んじゃう~~」

 「ピシッ」
 「もう許してよ~~~」

 悲しい声が部屋中に木霊するものの……
 一旦始めた償いの儀式が悲鳴で中断されることはない。

 「ピシッ」
 「いやあ~~~」

 「ピシッ」
 「もう、しません。ごめんなさい」

 「ピシッ」
 「ごめんなさい言ってるのに~~」

 カレンは、あまりの痛さに、顔を真っ赤にしてもだえ苦しむが、
それは15歳の娘を演じている普段の姿ではない。私の膝の上の
カレンは、悲しいものは悲しい、痛いものは痛いといって感情を
爆発させる10歳の少女に戻っていた。

 それでも最初の頃はまだ自分の本性を隠そうと努めていたが、
ここまでくるとそれどころではないのだろう。苦し紛れに両足を
必死にバタつかせるから大事な中身が見え隠れしだす。

 「ピシッ」
 「もうしません」

 「ピシッ」
 「ほんとだって……」

 「ピシッ」
 「ママ、助けて~~いやだ、いや~~~」
 痰を絡ませながらカレンは必死に母親を呼ぶが……

 それまで手助けこそすれ、邪魔などしたことのない母が、今は
娘の悲鳴で心変わりすることはなかった。

 この村は単なる行政区分ではない。よそ者が勝手に入って来る
ことを嫌う。同じ宗派で結ばれた運命共同体の社会なのだ。
 だから、この村にあっては村人同士の助け合いは美徳ではない。
義務なのだ。

 それは子供だって同じだった。子供は産んだ親の私物ではない。
村が共有する宝なのだ。だから、お仕置きする時も、相手はその
親とは限らなかった。例えば学校の先生、懺悔聴聞僧、お医者様、
その他いろんな人が子供をお仕置きすることができたのである。

 男女を問わず年齢を問わず、丸裸にしたお尻を誰もがピシピシ
やるもんだから、そのつど、その子の大事な場所は丸見え。微妙
に違う性器の様子だって、大半の大人がすでに見て知っていたの
である。

 とりわけ女の子の場合は、ローティーンの頃における躾が一番
厳しくて、礼儀や立ち居振る舞い、普段の生活習慣や勉強など、
結婚に必要な知識や技能をこの時期から徹底的に仕込まれるから
慣れてない分ついついお仕置きだって多くなるのだ。

 愛情によるものとはいえ女の子にとってはまさに受難の時期。

 『帰宅した少女が今日は何かがおかしいと思って頭をめぐらす
と、それはお仕置きがなかったことだと気づいた』
 なんて話がまことしやかに語られるくらいこの村でのお仕置き
は日常茶飯事だったのである。

 ただ、こんな嵐のような時期を過ぎてしまうと、女の子の場合、
お仕置きは激減する。
 というのも女の子から女性へと体が変化するなかで体に訴える
お仕置きというのは他人にははばかられたからだった。

 カレンもまた、13歳を過ぎると日頃の素行に問題がないこと
から、お仕置きを受ける機会はめっきり減っていたのである。

 ただ、そうは言ってもこれで全てが免除されたわけではない。
 とりわけ親や私はとの関係はこの先も続いていくことになる。

 実は当時の女の子というのは、親の家にいる限り決して一人前
とは認められない存在だった。13歳を過ぎ、15歳が18歳に
なっても、いや、二十歳を越えても、とにかく結婚して家を出る
までは『家の子供』という扱いを受忍しなければならなかったの
である。

 もちろん幼い頃ほどではないにせよ、家では隠れてお仕置きが
続いていたし、親を怒らせてしまうと、とたんに幼児扱いされる
という厳しいお仕置きが待っていた。

 オムツを当てられ、浣腸が施され、痕の目立たない処へお灸が
据えられ、哺乳瓶でミルクが飲まされ、嫌いな物ばかりが入った
おじやを無理やり食べさせられたりといった扱いだ。

 とりわけ村の掟で、子供は親の前ではどんなに恥ずかしい場所
もすべて晒さなければならないと定められているから、鼻っ柱の
強くなった女の子にとってオムツ換えというのはそのプライドを
ズタズタに打ち砕くのに最も効果的なお仕置きだったようである。

 そして、礼拝堂の片隅にある懺悔室もまた、そうした意味では、
『親公認のお仕置き場』だった。

 「ピシッ」
 「いやあ~~」

 「ほら、ぴーぴー泣いちゃダメでしょ。みっともないわよ」
 思わず母親の檄が飛ぶ。

 「ピシッ」
 「だめえ~~」

 「ピシッ」
 「いやだあ~~~」

 「ピシッ」
 「もういや~~~」

 カレンの悲鳴は、しだいに声のトーンが低くなる。

 それは、一つにはこの痛みに体が慣れてきたということであり、
もう一つは、もう逃れるすべがないという諦めでもあった。

 少女の金切り声を聞かずにすむというのは、正直、罰を与える
者としては楽に違いないのだが……

 しかし、こうなると女の子の頭の中はトランス状態。ひたすら
夢の世界を彷徨っていて、私の言葉も右手も彼女の心には届いて
いないことが多かった。
 だから、こうなると、これ以降のお仕置きは無意味なのだ。

 そこで、カレンに対するスパンキングはこれで終了となった。

 約束の回数にはまだ足りないが、問題は回数ではない。効果の
問題なのだ。お仕置きの目的は、あくまで子供の心に警鐘の鈴を
つけること。体を痛めるだけになったら、それは私たちがしては
いけないことだった。

 もちろん、再びコーナータイムをもうけて再開することも可能
ではあるが、それはあくまで犯情が重い場合のみで、彼女の場合
は、罪の重さに比してそれは妥当でないと判断して私は中止した
のである。

 「もう、いいよ。今回はまだ慣れていないみたいだからこれで
スパンキングは終わりにしよう」

 私はカレンを膝の上から下ろすと目の前に膝まづかせて両肩を
握り、恩赦を与える。

 すると最初はきょとんとしていたカレンの顔に赤みがさして、
やがて柔和な顔へと戻っていく。
 それを上から見下ろしていると、私の顔にも笑みがこぼれた。

 カレンの顔は穏やかになったがスカートはまだ捲り上げられた
まま。その下はスッポンポンなのだ。
 自ら命じたことなのでカレンには申し訳ないが、まるでその姿
は仔犬がエサをねだってチンチンしているように思えた。

 「今回だけ特別だぞ」
 こういうと、現金なものでカレンの顔は本当の笑顔になる。

 ただ、これでカレンに取り付いた穢れのすべてが打ち払われた
のかというと、そうはいかない。

 たしかにカレンは、何がよくて何がいけないかの理性は、今、
私を通じて神から賜った。しかし人は悲しい動物。それだけでは、
再び悪魔の誘惑があった時、今度はそれに負けないで行動できる
とする保証がどこにもないのだ。

 そこで大人たちは、償いの最後に、愛してやまない子供たちの
為を思い、人の理性を超えて、動物としての人間の体に直接訴え
かける愛を用意しているのだ。
 それがこれから行われる鞭による償いだった。

 そう、後半の鞭打ちはその為に存在していたのである。
 問答無用の痛みをお尻に染み込ませるために……

 このため鞭の償いはスパンキングのようにおしゃべりしながら
というわけにはいかない。大人たちからもらう痛みをじっくりと
体の中に蓄えるため会話は禁止、悲鳴もあげてはならなかった。

 鞭はもちろん誰にとっても痛いが、特に女の子たちにとっては
おしゃべりで気を紛らわせることができない分、スパンキングよ
り辛いようだった。
 カレンにとってもそれは同じで、この時間はひたすら我慢の時
だったのである。

 「カレン、鞭に移るよ。テーブルへ来なさい」
 私はそれまでより低い声でカレンを呼ぶ。

 ゴブラン織の敷物の上で膝まづき、神様への懺悔を繰り返して
いるカレンを償いの場へと呼び戻すためだ。
 それは子供たちにとっては死刑執行みたいな緊張感に包まれる
ひと時だっただろう。

 白いスカートの裾を巻くりあげ、ショーツも穿かず神様の前で
コーナータイムを行うのは、世間的な常識にはそわないかもしれ
ないが、それは我宗派の『神はそのはじまりにおいて不浄な物は
お創りにならない。恥ずかしさや卑猥は、人間の心の弱さが作り
出したコンプレックスにすぎない』という理念からきている。

 このため、この村の子供たちは、大人たちから命じられれば、
たんに恥ずかしいからという理由だけでは、裸になることを拒否
できなかったのである。
 子供たちはたとえ歳がいくつになっても、両親や教師、この私
に対しては、その体の全てを見せなければならなかったのである。

 「まず、仰向けになりなさい」
 私はまず、カレンに対して机の上で仰向けを求めた。

 カレンはこれから何が起こるのか先刻承知しているのだろう。
慌てた様子も取り乱した様子もなかった。

 求めに応じてカレンがテーブルに仰向けになると、マーサの手
がさっと伸びてカレンの両足をすくい上げ、空いた手がタオルを
カレンの顔にかける。

 そんな一瞬の隙にフラッシュの閃光が光る。

 ここでの仕事は写真撮影。
 償いの前と後で写真を撮り、『このように償いをさせました』
とカレンの父親に報告するための作業だ。

 だから、写真機はネガを残さないポラロイド。鍵の掛かる薄い
木箱に納められた写真は父親だけが持っている鍵により開けられ、
確認されることとなる。

 中には、あえてこの写真を子供に見せ、どのような償いだった
のかを尋ねる父親もいた。

 記念撮影が終わると、次はいよいよ鞭打ちの償い。

 今度は上半身だけをテーブルに乗せてうつ伏せになるのだが、
その角には腰枕と呼ばれるクッションが置かれていているから、
これにお臍の辺りを乗せてヒキガエルみたいに這い蹲るのだが、
こうするとお尻だけが少し浮き上がって、鞭を使う側にとっては
お尻に狙いを付けやすかった。

 カレンの白いお尻が羞恥心でピンク色に染まり、恐怖心からか
少し震えているのがわかる。

 私はテーブルの引き出しから噛み枕を一つ取り出すと、あえて
カレンの鼻を摘み、それを口の中へ乱暴にねじ入れる。

 噛み枕は鞭の痛みに気が動転した子供が、誤って舌を噛んだり
しないように口に入れてやる安全具だが、無理やり口の中にねじ
入れてやることで、緊張感がさらに増し、反省を促すには効果的
だったのだ。

 さらに、カレンのように鞭になれていない子の場合は体を拘束
バンドでテーブルに固定させるケースも少なくない。ただ今回は、
母親とマーサが助手についてくれているので、あえてそこまでは
しなかった。

 実際、女の子の場合は無機質なバンドより、人の手の方が反省
を促すという意味では効果的だったのである。

 「両足を開いて……もっと……もっとだ……もっと大きく」
 次に、私はカレンの両足をできるだけ大きく開かせた。

 「ほら、ぐずぐずしない!……言いつけに従えないなら、罰が
もっと増えることになるよ」
 私は、厳しい調子でカレンを叱責すると、中の物が全て見える
ほど大きく、お尻の割れ目を押し開いていく。

 「いやあ!!」
 噛み枕を通して思わず出てしまったカレンの悲鳴。
 でも、私もすぐに反応する。

 「ピシッ!!!」
 平手で強めにお尻を叩いたのだ。

 「悲鳴を上げるな!まだぶたれてもいないのにみっともないよ。
鞭ではおしゃべりも禁止、悲鳴も禁止だ。忘れたのかい」
 ここでは私も厳しい。
 すべてをこの革製の鞭(トォーズ)で悟って欲しかったのだ。

 もちろん、これが年頃の少女にとってどれほど嫌なことかは、
私だって承知しているが、そもそもお仕置きという行為自体が、
子供にとって嫌な事をあえてさせているわけで、こうして普段は
風の当たらない場所に風を送り込んでやるのも、ここでは昔から
認められた償いの一つだったのである。

 鞭打ち前の儀式はこれだけではない。

 両足が十分に開かれると、今度は脱脂綿に大量のアルコールを
含ませて、太股からお尻のお山、くびれた腰、背骨が浮き出した
背中へも肩甲骨あたりまで丁寧に拭き清めるのだ。

 この村の子供たちは、幼い頃から革紐鞭を受けるたびにお尻を
はアルコール消毒され、その直後、再び、火の出るような痛みに
襲われるという経験を持っていた。
 もちろんカレンにとってもこの儀式はこれが初めてではない。

 体温の高い子供にとって体の熱を奪うアルコールはそれだけで
大人が感じる以上に刺激的。それが、さらに強烈な痛みとリンク
したとしたら……。

 幼く不幸なパブロフの犬は、この時点でお漏らしするケースが
非常に多かったのである。

 カレンにしてもそうした幼児体験を経て今日があるから、その
刺激は、大人が予防注射の前にアルコールを湿した脱脂綿で消毒
してもらうのとはわけが違う恐怖だった。

 実際私がカレンのバックを清め始めると……その太股が振動し
……お尻が震え……腰がくねり……背中が反り返る。

 そして、性的に目覚め始めた子は、さらにこのあたりから体の
中をねっとりとした蜜で濡らし始めるのだった。

 「さあ、いくよ」

 私は幅広厚手のトォーズを手に取ると、遠心力に物を言わせて
カレンのお尻を打ち据える。

 「ピシッ~~~」

 革紐独特の乾いた甲高い音が部屋中に木霊するなか、カレンは
両方の手に力を込めて必死にテーブルを握りしめた。

 母親が娘の両手をしっかりと握りしめて間違ってもテーブルを
離れないように押さえ込み、両足はマーサが足枷の役目を引き受
けてくれているさなか、それは渾身の力と言っていいだろう。

 こうまで厳重にするのは、鞭に驚いて万が一テーブルを離れる
ようなことがあると、その鞭はノーカウントになってしまうから
だ。
 いくら償いの為とはいえ、まさか、娘のお尻をこのまま延々と
鞭の下に晒し続けるわけにはいかないから母親だって必死だった
のである。

 しかし、こうしたヒューマニティー溢れるサービスも、いつも
いつも行われていたわけではない。
 その子が重い罪を犯し、年齢が高く、札付きで改悛の情も感じ
られないとなれば、拒否することもあった。

 その時は純粋に自分の力だけで罪を購わなければならないのだ
が、この方が辛いのだ。
 そう、この場では、拘束されるというのは罰が重くなったので
はない。みんなに支えられて罪を償うのはむしろ温情。そして、
この時、女の子はなぜかリビドーを感じる子が多かったのである。

 「ピシッ~~~」
 
 「ヒヒヒヒヒヒ」
 噛み枕のせいで悲鳴もはっきりとは聞こえないが、その瞬間、
背中が反り返り、マーサが支えきれない太股が震えだして、……
カレンの下半身はまるでオシッコを我慢しているようだった。

 端から見ていると、惨めな、そりゃあ惨めな姿だが、鞭を受け
ている当人は、『恥ずかしい』とか『辛い』とかそんなことさえ
感じている余裕がなかった。

 今は、鞭の衝撃に耐えるだけで精一杯だったのである。

 「ピシッ~~~」

 「ぃぃぃぃぃぃ」

 「ピシッ~~~」

 「ゃゃゃゃゃゃ」

 「ピシッ~~~」

 「シヌシヌシヌシヌシヌシヌ」

 恐らくは叫んでいる当人すら何を言ってるのかわからないほど
混乱した声が、噛み枕のフィルターを通って部屋中に拡散されて
いく。

 こんな時はやってるこちらの方も辛かった。

 「ピシッ~~~」

 「ぁぁぁぁぁぁ」

 「ピシッ~~~」

 「ぅぅぅぅぅぅ」

 「ピシッ~~~」

 「ぁっ…………」

 こうして10回ほど打ち据えた時だっただろうか、突然、悲鳴
が途絶えたのである。
 もともと噛み枕を噛んでいるせいで大声は出ない。くぐもった
低い声、小さな音なのだが、無音となれば話は別だった。

 悲鳴が止まったのは、カレン自身感じていたからなのだろう。
幼い子の中には、鞭に耐えることに必死で、お漏らしは感じない
まま、周りの大人に促されてそれを知る子もいるが、カレンは、
自分の粗相を感じ取れているようだった。

 恐らく隣りの部屋で浣腸した時、恥ずかしくて完全に排泄して
こなかったのだろう。
 理由はともあれ、こうなると、さすがに鞭は中断される。

 「カレン、いったん、テーブルの脇に立ちなさい」

 私の命令に呆然と立ち尽くすカレン。
 よくマンガで目が点になった少女の絵が出てくるが、この時の
カレンはまさにそんな感じで、現実感のない顔で前も隠さず立ち
すくんでいた。

 たちまちカレンの母親と助手のマーサがタオルや穿替えの下着
を取りに部屋を出て行き、それが戻って来ても、カレンはずっと
そのままの場所に立っていたのだ。

 もちろんそれって私が『テーブルの脇に立ちなさい』と言った
きり、その後何も指示を出さなかったからなんだろうが、それに
しても普段だったら、そのままボーっと立ってるはずがなかった。

 15にもなった娘が、粗相した自分のお股を母親によって拭き
清められるなんて、こんな屈辱はないわけで、償いの為の鞭打ち
はそんなカレンの様子を見ていてそのまま中止となったのである。

 スパンキングもそうだが、鞭打ちの回数はあくまで償いの為の
目安であって絶対ではない。
 要は今回のことを反省してこれから先も心に留め続けられるか
どうかということだった。

 カレンはお漏らしという鞭打ち以上の辱めを受けたのだから、
その心の傷はすぐには消えないかもしれない。しかし、お仕置き
を与える者としてはそれでいいのだ。

 彼女が大人になる頃まで心の傷が疼いてくれれば、悪魔の誘い
への抑止力となり続けるからで、その後のことは時間が解決して
くれる。
 どんなに辛い体験も、時の流れがそれを笑話へと変えてくれる
からだ。

 いずれにしても、償いとしてはこれで十分だったのである。

 もちろん、なかには、鞭の痛さに耐えかねてわざと粗相をし、
その先の鞭を許してもらおう、などとちゃっかり考える子だって
いるかもしれない。
 しかし、私が受け持つ子供たちに限って言えば、そんな勇気の
ある女の子は見かけたことがなかったし、仮にそんな事をすれば、
それはそれで、やはりわかるものなのである。

 また、そのくらいの嘘が見抜けないようなら、幼年司祭は失格
だった。

 最後に、再びカレンを仰向けに寝かせると両足を高く上げさせ
て記念撮影。

 私の推察通り、そこには光るものがあったのだが、これ以上、
親を心配させる必要もなかろうとタオルでぬぐってフラッシュを
焚く。問題があればまた私の処へ来るだろう。

 この写真の送り先は、単身赴任している父親のホテル。
 恥ずかしいその写真は娘カレンの成長の記録でもあったのだ。


**********<おしまい>*************

幼年司祭 (中編)

 中編

 私は告解を施す部屋へと戻って暖炉の火をおこす。
 この暖炉の上には大きな祭壇があり、回心を望む者はこの暖炉
の前で膝まづいて、まず神様に心を入れ替える旨を伝えるのだ。

 この時、神様には自分のありのままの姿を見てもらわなければ
ならないため、回心の儀式は女の子も含め全裸で行われることに
なっていた。
 体は神様によって与えられたが服は親が与えたものだからこの
場にふさわしくないというわけだ。

 また、『人の身体は、性器も含め、そのすべてが神様のお創り
くださった神聖なもの。卑猥なものなどあるはずがない』という
訳で、子供たちはいろんな機会に裸にされていた。

 親だけでなく教師や聖職者も、日常的に子供を裸にして、発育
状態やその日の健康状態、お仕置き以上の虐待を受けていないか
相互にチェックしあっているているし、身体検査は全裸で行い、
プールの授業も水着は着けない。何か悪さをしでかせば、廊下に
全裸で立たされるなんてことも日常茶飯事だ。しかもこんな時は
思わず両手で性器を隠したいところだが、それも許されていなか
った。

 子供は責任を問われない代わりに責任ある大人に全てを委ねよ
という古い戒律がここでは生きていたのである。
 言い返れば、子供は大人のなすがままにしていれば幸せに暮ら
せるということになる。

 さて、こんな重々しい儀式を執り行う部屋ではあるが、内部は
いたってシンプル。この部屋に余計な物が一切なかった。

 厳かな祭壇の前には、一畳ほどの古びた絨毯が敷かれ、あとは
黒光りする年季の入ったテーブルが部屋の中央に一つあるのだけ。

 そうそう、償いの為の鞭だが、これは部屋の壁に大きさ太さの
違うケインがこれ見よがしに掛けてあるのだが、これはあくまで
子供たちを怖がらせる為のデコレーション。実際に使用する鞭は
古びたテーブルの引き出しのなかにある。

 大きな引き出しを開けると、ケインをはじめトゥーズやバラ鞭、
パドルなど多種多様の鞭を一同に見る事ができるが、これも子供
をビビらせるための演出で、これをみんな使うわけではない。
 その子の年齢や性別、罪の軽重ここでの態度など総合的に判断
して的確な物を選択するが、女の子の場合はケインのような傷の
残りそうな物はやはり避けていた。

 その他、部屋の隅に置かれた大きな壷には水が張られた中に、
樺の木の鞭がまるで傘立ての傘のように無造作に刺さっていたり、
キューピットが女神様にオーバーザニーでお尻を叩かれていたり
する宗教画なども飾られているが、いずれも、『ここは、怖い処
なんだよ』と教えるための演出装置だった。

 私の方も、準備らしい準備はなく、衣装を告解用の白い法衣に
着替えると、カレンの父親がしたためた手紙に目を通しながら、
カレンが着替えを済ませてこの部屋へやって来るのを待っていれ
ばよかった。

 この父親からの手紙。もちろん告解そのものは私の権限だが、
親の意向をまったく無視することはできない。特に、罪の赦しを
得るのに必要な償いをどうするかは親の意向を反映させることに
なるからだ。

 とはいえ、手紙の内容に子供のための助命嘆願といったものは
少なく、むしろその大半が『なるべく厳しくお願いします』とか
『年頃になり親の目を嫌がります。性器の検査をお願いします』
『うちの場合はお灸をすえる習慣がありますからそれも可能です』
などといったものが多かった。

 手紙の内容を確認すると、あとは待つだけなのだが……。
 そうなってから先、しだいに鼓動が早くなり自分でも緊張して
いるのが分かる。
 もちろん、連れて来られる子供たちは緊張しているだろうが、
私もこうしたことに慣れることはなかった。

 いくら先輩から色んなノウハウを教わったとしても神でもない
自分が本当に人の心を読み取れるのか、自分の与えた鞭はその子
の心に本当に届いているのだろうか、など思うことは色々だ。

 そんな事に思いをめぐらしていると、さらに『平然として人を
罰することに罪はないのだろうか?』などとまで考えてしまう。

 村人は私に対し、感謝こそすれ悪くいう人はいないが、それは
私個人の人徳と言うより教団の権威が私の背中を明るく照らして
くれているからにすぎない。

 私はそれに乗っかって仕事をしているだけ。これから振るう鞭
も『これは自分の意思ではなく使途の意思によるもの』と自分に
言い聞かせて、子供たちをを罰しては許すを繰り返してきた>

 ただ、その一方で……
 『幼年司祭はロリコン野郎の成れの果て』
 なんて落書きが教会の壁に描かれたこともあった。

 確かに幼年司祭になれば、男女を問わず幼い子の性器は見放題。
懺悔に来た子の償いをどの程度に設定するかも私の判断一つなの
だから子供たちに恨みをかっても仕方がないのかもしれない。

 しかし、私に限らずいかなる聖職者も決して勝手気ままに鞭を
振るっている訳ではない。親の意向を聞き、子供の心をしっかり
と読んで的確なお仕置きを与えようと心がけている。
 それもこれも、その子を立派な村の一員に育てあげようと誇り
を持って仕事をしているから、いらぬことをしているとは思って
いないのだ。

 だからこそ、こんな平和な村にもあっても、私は、子供たちに
とっては怖い存在、親たちには子供の躾になくてはならないもの、
としてその役割が受け継がれてきたのだった。

 去勢されたうえに、下積みだけでも十年もかかるこの仕事は、
成れの果てがやるには、けっこう骨の折れる仕事なのである。


 それやこれや、いつものように頭の中を巡らせているうちに、
鋼鉄製の重い扉開く。
 重く厚い扉は防音の為だった。

 その扉がマーサの両手によってゆっくりゆっくりと開かれた時、
そこに現れたのは臙脂のジャケットから白い麻のワンピースへと
衣替えしたカレンの姿だ。

 この麻のワンピースはいわば白装束。
 『私に二心はありません。どのような償いもいたします』
 という決意の証として着るもので、誰もが教会にストックして
あるものの中からサイズの合うものを選んで借りることになって
いた。

 だから、これはカレンの私服ではない。しかし、清楚な雰囲気
を感じるカレンには、この白いワンピがことのほかよく似合って
いる。

 「カレン、ここへいらっしゃい」

 部屋に一歩踏み入れたカレンを、早速、手元に呼ぶ。

 そうやって、カレンが私のもとへとやってくると、重いドアが
鈍い音をたてて閉まっていく。
 あわてて振り返るカレンだったが、お母さんとマーサはすでに
閉まるドアの向こう側。これからはカレンと私、二人だけの世界
が始まることになる。

 カレンにとってこの行事は初めてではないから、取り乱したり
はしないが、まだ幾ばくかの恐怖と震えがその身体に残っている。
 それをしっかりと抱きしめると……こう諭した。

 「大丈夫だよ、震えることはないんだ。とにかく落ち着こう。
これは試練だけど、乗り越えられない試練というのはないはずだ
から。今日の事は、後日、君が大人になった時に必ず役立つこと
なんだよ。昔から言うよね、こうした試練は為になるレッスンだ
から無駄にはならないって……わかるよね?以前にも何度かお話
したから覚えてるだろう?」

 「そんなの…わかってます」
 私の問いに抱きしめられているカレンは胸の中で静かに頷いて
みせる。

 ありきたりの言葉でも女の子には大切なメッセージなのだ。

 大半の子どもたちは幼い頃から私のお仕置きを受け続けている。
学校には先生、家庭には当然、親がいて子供たちは色んな大人達
から叱られるわけだが村の中で起こした揉め事は私の担当だった。

 建物への落書き、喧嘩やいじめ、公園の遊具を独り占めする子
だって、大人たちに首根っこを掴まれて私の処へ連れて来られる
ことになるのだ。

 だから、私を嫌いな子だって大勢いるはずなのだが、なぜか、
ここへ来てこんな中年男の抱擁を露骨に嫌がる子はいなかった。

 こうやってしばらくお互い立ったまま抱きあううちに、カレン
の目から涙が溢れて、私のシャツを濡らし始める。

 カレンの涙を見た瞬間『これは本物だな』と思ったから、私は
彼女を抱いたまま椅子に腰を下ろす。幼子のように抱っこしたの
だ。

 ここで言う本物は懺悔する気がある、回心する気があるという
こと。もし、本物でない場合は、不本意ながら子供の意に反して
ここでもお仕置きすることになる。それは当然、本物の場合より
辛い体験だった。

 「神様に懺悔しようか」
 私が耳元で囁くと、カレンは静かに頷いた。

 彼女は自らの行いが神様との約束とは違うことをしてしまった
と恥じているのだ。そして、もう一度、父母や先生、教会の秩序
の中で暮らしたいと望んでいる。
 震える彼女の身体を抱いていてそれで分かった。

 ただ、気持はそうでも、その腰はすぐには上がらない。

 断っておくが、彼女がこの場でどんなに大粒の涙を流そうと、
甘える仕草で私を懐柔しようと、いったん宣告されたお仕置きが
変更されることはないし、鞭の威力が削がれることもない。
 その意味で、私は子供たちにとってはとても怖い存在なのだ。

 しかし、そんな怖い存在に、一時(いっとき)抱かれることで、
村の子供たちは安らぎを得る。
 親、先生、聖職者、鞭を振るう事のできる誰もがそうなのだ。
 逆の見方をすると、無条件で抱かれていても、安らぎを得られ
ない場合は、そもそもその子を叩いてはいけないのかもしれない。

 幼いカレンにそんな説明はしないが、私はカレンの様子を見て
いて、『私にはこの子にお仕置きする資格がある』と感じていた
から、方針は変えなかったのである。

 椅子に座り、しばらくはカレンを膝の上に抱いて、ただじっと
していた。
 この子は悪い子だから、キツイお仕置きが必要なんだとは考え
ていなかったのである。

 「さあ、そろそろ、神様に懺悔しようか」

 10分ほど抱いてから、私はカレンを膝の上から下ろす。
 幼い頃から同じ事をしてきたつもりだったが、カレンもすでに
15歳、私が去勢された人間であっても男の前で裸になるのには
抵抗があって当たり前の歳になっていた。

 私が彼女の足を床に下ろすと頬がほんの少し赤くなった。

 自ら一糸纏わぬ姿になって男の前に立つのは15歳の少女には
酷な注文なのかもしれないがこの村に生まれた以上そこは避けて
通れない。

 カレンにその決心をつけさすため私は急がせなかった。

 すると、ゆっくりだが白い麻のワンピを脱ぎ始める。
 軟らかいスリップも……
 白い綿のショーツも……
 手元を離れ脱衣かごにそれらが収まっていく。

 ブラだけしてないが、これはカレンの胸が特に小さかったから
ではない。ブラを身につけるのは化粧と同じで大人になってから
というのが大人たちの考えで、体育の時間など特別な必要のある
場合以外は身につけることを許していなかったのである。

 さて、こうして何一つ身に纏わなくなったカレンは、前を両手
で隠すような仕草をして祭壇の前で進み、その敷物に膝まづく。

 この時、私は介添え人として彼女の左肩に着いてサポートする
しきたりになっていた。これはカレンが言葉に詰まった時、助言
するためだ。

 「私、藤島カレンは神様とのお約束が果たせなくて今とっても
狼狽しています。このまま神様とのご縁が途切れてしまったら、
私は、この先、生きていけません。ですからここで回心します。
どうか、どうか、私を神様の僕に再びお加えください。その為に
何をなさねばならないのか、どのような試練を受けたらよいのか
お示しください。私は、仰せのままにその試練をお受けします」

 これは私たちの教団で懺悔を受けようとする者が必ず口にする
回心の言葉。長い台詞なので、幼い子には私が一つ一つ口移しで
教えることにしているが、中学に上がる頃には、もうほとんどの
子が暗記することになる。

 というのも、小四から中一の間は、それほどまでにお仕置きを
受ける機会が多いからだ。カレンの場合も同様で最後のお仕置き
からもう長い時間が経っていたが、私のサポートなど必要ないと
言わんばかりに、今でもしっかり覚えていた。

 使い古された敷物に跪き、両手を胸の前で合わせて祈るカレン。
 まさに乙女の祈りといった神聖な雰囲気が漂う。
 懺悔やお仕置きってこうでなくちゃと思う瞬間だった。
 そして、二度目が始まる。

 「……………………」
 ここでの私は見守るだけ。出番はなかった。

 「私、藤島カレンは神様とのお約束が果たせなくて今とっても
狼狽しています。このまま神様とのご縁が途切れてしまったら、
私は、この先、生きていけません。ですからここで回心します。
どうか、どうか、再び私を神様の僕にお加えください。………」

 神様からの答えを求めてこれを三回唱えることになるわけだが、
もちろん、何度唱えようと神様から直接の返事は返ってこない。

 そこで、三度目が終わると私が……
 「カレン、神様はね、君にどんな約束違反があったかをお尋ね
になってるよ」
 と、告げて次に進むことになる。
 約束事に従って、儀式は滞りなく進んでいくかに思われた。

 ところが……
 カレンの口から次の言葉が出るまで少し時間がかかった。
 「………………………………………………………………………」

 理屈を言えば、彼女はすでに私に対して全てを話しているのだ
から、今さら神様に話しても恥ずかしがることではないはずだが、
宗教の世界において神様というのは別格ということなのだろう。
 こういうケースはカレンに限らずけっこう多かったのである。

 そこで、再び、告白を勧めてみる。
 「誰だって自分の不始末を話したくはないだろうけど、ここで
勇気を持たなきゃ、君だけがみんなから置いてけ堀を食っちゃう
よ。さっき私に話した通り話せばいいのさ。神様は全能だからね、
君の事だってすでにご存知のはずだけど、ここはやっぱり君の口
から話さなきゃいけないことなんだ」

 カレンは私の説得に静かに頷いた。

 そして、再び両手を胸の前で組みなおすと……
 「母の財布から、500円だけ取ってレコードを買いました。
タイガースのレコードです。新曲が出るたびにやってたんですが、
それが見つかっちゃって……そのことで叱られてる時に『あなた、
最近、またオナニー、やってるでしょう』って脅されて、思わず
頷いちゃったら……二つともお父様に報告するって言われたから、
慌てて謝っんだけど、聞いてくれなくて……じゃあ、教会で懺悔
しましょうってことになっちゃって……でも、オナニーと言って
も、ほんのちょっとクリちゃんに触っただけなんです。ホントに
ちょっとだけなんです」

 カレンは驚くほど明快に事実を語る。大人の場合はそばで私が
聞いている事を考慮して、こうも赤裸々に語ったりしないものだ
が、乙女にはまだ神様との幼き日の思い出が残っているのだろう。
むしろ、大人以上に神様との距離が近いのかもしれない。

 『神様は全てをご存知だから嘘や隠し事をしてもすぐにばれて
罰がどんどん重くなりますよ』
 『神様は偉大で絶対的なものです。あなた方の小さな過ちも、
すべて見通しておられますからね。嘘ばかりついてると、地獄に
落とされますよ』

 村に生まれた子供たちは、親や先生方からこんなことを言われ
続けて成長する。
 その呪縛が良い意味でカレンの心に残っていたみたいだった。

 「わかりました。では、これを悔い改めますか?」

 私が尋ねると……「はい」……小さな声。

 「償いも受けますね?」

 再び私が確認するとこれにも……「はい」……再び小さな声が
聞こえた。

 「よろしい、では、お母様のお金を盗んだことには鞭12回を
卑しい楽しみにふけったことには鞭18回をその償いとして与え
ます」

 ここで、再び、カレンの声が止まった。
 それは、きっとそれまで受けたことのない償いを言い渡されて
戸惑っているのかもしれなかった。

 すると、それまで隣の隠し部屋からこちらの様子を窺っていた
母親が思わずマジックミラー越しに声を掛ける。

 実は、告解のこの部屋と隣の部屋はキューピットのお尻を叩く
女神様の絵を通して覗くことができるようになっていた。

 「さあ、勇気をもって、『はい、お受けします』って言うの。
うじうじしてたって試練は終わらないのよ。神様は乗り越えられ
ない試練はお与えにならないわ」

 母の言葉が背中を押して、カレンも勇気が出たようだった。

 今回、カレンは女の子だが、実際、こうした事には女の子より
男の子の方が勇気がなくて、今さらどうにもならないと分かって
いても、うじうじとしているのは男の子の場合が多かった。

 仮に、この懺悔が御破算になれば、日曜に行われる子供ミサで
村じゅうの子供たちが見守る中、お尻丸出しで鞭を受けなければ
ならない。

 女の子の場合は、打算的に考えて村じゅうの子供たちの前での
辱められるよりこちらの方が被害が少ないと考えるのか、たんに
権威に対し従順なだけなのか、いずれにしても、男の子にはそう
した勇気のない子が多かった。

 カレンは決断する。
 「私は、悔い改め、罪を償います」

 毅然とした態度、きりりと締まった顔立ち、鋭い眼光が、私を
見つめる。それは、思わず私がのけぞるほど凛々しかったのだ。

 「よろしい。……では、一つだけ、あなたに尋ねますよ」
 気を取り直し、背筋を伸ばしてカレンに尋ねる。

 「えっ!…あっ……はい」
 今度は予期せぬ出来事にカレンが戸惑う。
 でも、これもまた可愛い。

 「あなたは、なぜ、大人なら服を着て懺悔できるのに、子供は
裸にならなきゃならないのか分かりますか?」

 「えっ??……それは……そのう……幼い頃から司祭様たちが
そうしなさいって…………」

 カレンの答えはそこまでしか出てこなかった。
 そこで……
 「そう、確かにそうです。私たちはあなたたちのような子供に
対しては服を全部脱ぎなさいって言いますけど、それにはちゃん
とした理由があるんです。あなたにも教えてあげたはずだけど、
忘れてしまいましたか?」

 「え~~と、それは………………」

 カレンは困惑する。
 目が点に、顔が青くなり、わずかの間に紫色へと変化した唇も
震えている。

 『ひょっとして、これに答えられなかったら、お仕置きが追加
されちゃうんだろうか?』
 そんなことが脳裏をよぎっていたのかもしれない。

 笑い顔、泣き顔、困った顔に怒った顔、どんな表情になっても
可愛く感じられるのは少女の役得だった。

 「君が着ている服は君が仕事をして稼いだお金で買った物じゃ
ないよね。いわば、お父様、お母様からプレゼントされた物だ。
だから、真実の君は神様から創っていただいた時の身体以外には
何も持っていないわけで、その姿で神様には会わなきゃいけない
んだ。誰かにもらった服を着て、さも『これが自分の成果です』
といった顔で神様に会ってはいけないんだよ。それは神様を騙す
ことになるからね」

 「……はい」
 カレンは硬い表情のまま、小さな声で答える。
 きっと、『そんなこと言ったって……』という思いがあるのだ
ろうが……。

 「それが、自分の作り出したもの、稼いだお金で買った物なら
神様の前で、『神様が私を創ってくださったおかげで私はこんな
にも色々な物を生み出すことができました』って自慢することは
いっこうに構わないけど、誰かに無条件でもらった物はそれには
当たらないんだよ」

 「……はい、ごめんなさい」
 
 「謝る事はないよ。君はまだ子供なんだから……でも、それが
悔しかったら、早く自立して、神様に『今度はこんな事ができる
ようになりました』って報告に来ればいい。あなたを創った私達
の神様はそれを大いに喜んでくださるはずだし、ご両親も喜んで
くださるはずだ」

 「……はい、ごめんなさい」
 カレンは私の言葉を聞いていなかったのか、また、同じ言葉を
繰り返す。

 きっと『早くこのお説教が終わり、手早く鞭を受けて、一刻も
早くおうちに帰りたい』
 そう思っているに違いなかった。

 でも、これだけは言っておきたかったのだ。

 「今、君が持っているのは、神様から創っていただいた、その
若い身体だけ。その他は何も持っていないんだ。わかるかい?」

 「はい、司祭様」

 「でも、嘆く必要もないんだ。その若い体は金持ちがどんなに
金銀を積もうとも、決して手に入らない貴重なものなんだから、
君は、今、世界一の金持ちでもあるんだよ」

 「…………」
 その瞬間、カレンが思わず笑顔になった。
 きっと『最初は一文無しだと言っておきながら、最後は若い体
があるからすばらしい』だなんて調子の良い理屈だと思っている
のかもしれない。

 しかし、それは年をとればとるほど分かるのだ。
 若い体は何ものにも変えがたい貴重な財産……そして、それを
働かせるエネルギーが『自分には何もない』と自覚することだと
……。

 子供をあえて裸にするのは、そのことを自覚させるためだった。

 「さあ、カレン。始めようか」
 私はカレンの手を取った。

 すると、ここでカレンが恥ずかしがる。
 今までも裸だったはずなのにここにきて恥ずかしいのは今まで
の緊張感がふいに緩んだためかもしれない。

 私達の宗教に無縁な人には分からないと思うが、懺悔をすれば
どんなことでも許されるわけではない。仮に犯した罪が重ければ
懺悔では足りず公開の裁判、公開処刑となってしまう。
 それは子供たちも同じだった。

 悪質ないじめや度を越した悪戯は懺悔だけでは埋め合わすこと
ができない。その場合は、ミサの席に引き出されて裁判を受け、
心が凍りつくようなお仕置きをも覚悟しなければならなかった。

 今、カレンは、償いをすれば許されるという確約を私から得た。
恥ずかしい姿のまま鞭の痛みに耐えさえすれば出口は見えている
のだ。

 そこで、ホッとした瞬間、今度は自分の姿が恥ずかしくなった
というわけだ。人間なんて勝手なものだが、それも含めて神様が
お創りくださったものなのだから仕方がなかった。

 「さあ、今さら恥ずかしがってないで、さっさと立ちなさい」

 私がカレンの右手を強く引き上げると、彼女もそれ以上は抵抗
しなかった。

 立ち上がらせ、気をつけの姿勢を取らせてショーツやスリップ
を私自らが穿かせていく。

 もちろん、こんなことは彼女自身に任せればよいことだろうが、
子供の懺悔は、あくまで相手が子供ということで、罰が一段緩く
なっている。その代わり大人には認められる羞恥心が認められて
いないから、あえて私が子供の着付けを手伝い辱めを加えること
でその均衡をとっていたのである。
 つまり、これはサービスではなく罰の一種。

 とはいえ、幼いうちならいざ知らずこんな大きくなった少女に
それは酷かとも思うが、恥ずかしさを子供が主張してきた時は…

 「子供のくせに生意気なこと言うんじゃありません。そもそも
こんな大きな体になってから罪を犯す方がいけないんです。そん
なに恥ずかしかったら、二度とこんなことにならないように気を
つけるしかないですね」
 と、突き放すことにしていた。

 カレンにもかつてそんなことを言った記憶がある。
 それを覚えていたのだろうか、今回は何も言わずなすがままに
着せ替え人形になっていた。

 最後に白い麻のワンピを頭から被らせスカートの皺を整えると
着せ替え人形は完成。
 実際、これから先、子供たちを待っているのは忍の一字だから
その心は人形にでもならなければ耐えられなかったかもしれない。


 身づくろいが整ったあと、カレンの行き先は古びたテーブル。
ここにうつ伏せになり、懺悔の言葉を口にしながらひたすら私の
鞭の痛みに耐え続けなければならなかった。
 これは大人も子供も変わらない儀式だ。

 ところが……
 「さあ、うつ伏せになって……」
 私が勧めると、カレンはテーブルの角まで来て、こんなことを
言うのだ。

 「あのう、今日は最初にスパンキングはないんですか?」

 「スパンキング?……その方がいいのかね?」

 「いえ、……でも、昔、たしか、そうだったから……」
 心苦しそうな言い訳。しかし多くの子供たちを見てきた私には
彼女がそうされることを望んでいるのがはっきり分かった。
 自分に都合の悪いことならあえて口にしないというのが女の子
のポリシーだからだ。それをあえて口にするというのは、あえて
こちらをやって欲しいという意思表示に他ならなかった。

 「まあ、そうだな……」
 私は、カレンの望みに困惑する。

 というのも、この鞭打ちによる償いは、いくら決まり事とはいえ、
幼い子には多少酷な面もあるので、まずは椅子に座った私の膝に
その子を呼んで、お尻を平手で叩くスパンキングを行ったのち、
それにみあった回数を減らして、テーブルでの鞭打ちに移行する
という方法を採用していた。

 こうすると、叩かれる回数は増えるもののお尻が受ける衝撃が
少なくてすみ、こちらも相手の様子を窺いながら償いをさせられ
て、都合がよかったのだ。

 ただ、これはあくまで幼い子を想定したもので、小学六年生や
中学一年生といった大きな子でそれをやったことはなかったのだ。
カレンだって、中学に上がってからはそんな償いをしたことなど
ないはずだったが……。

 そこで、一瞬、私は彼女の提案を断ろうかとも思ったのだが、
……しばし考えてから思い直す。

 『免れることの出来ない鞭打ちとは違い、スパンキングは任意。
いくらお尻への衝撃が少ないといっても、男の私に自分のお尻を
間近に晒して、その手で叩かれたいなどとは、普通は思わない。
女の子ならなおさらそうだ。

 にもかかわらず、あえてスパンキングを持ち出すなんて……
 どうやらカレンは、無意識にもせよ誰かからのスパンキングを
欲しているのかもしれない。とすれば、それは彼女のオナニー癖
ともリンクする。

 『ひょっとして、心の悩みを抱えかなり重症かもしれないな』
とも思った。

 ただ、咲いた花が蕾に戻らないように、一旦成熟した女の体に
後戻りはないから、どんな事情であれ、それを望むのならやって
あげた方いいだろう』と思い直したのだった。

 私達の教団は子供の性に関して決して寛容ではないが、それは
感化を受けやすい年頃であっても無垢な心を大切にしたいから。
 ただ、幼い日より罰を受け続けることでそれが甘美な喜びへと
変化していく事も知られた事実であり、そうやって大人になって
いく子のその後の人格まで否定するつもりはなかった。

 「おいで……」
 私はイスに腰を下ろして、カレンを呼ぶ。

 私の声に反応したカレンが、さも申し訳ないと言わんばかりの
顔でやってくる。
 私の前に立ったカレンは一目見て傷心の表情。憔悴した様子で
下唇を噛み、必死に正気を保とうとしている。

 カレンのこの姿を見れば、ほとんどの大人が同情を禁じえない
だろう。

 でも、お仕置きを生業としてきた私には、彼女の素振りに別の
ものを見ていたのである。

 これは職業病だろうか。長い間こうした仕事をしてきた私には、
カレンのほっぺの下が微かにふるふると震えているのが気になる
のだ。それは笑いたい気持を必死に抑えているかのようだった。

 「ここへ来なさい」
 私が膝を軽く叩くと、カレンは素直に従う。

 『おっ!重い!』

 突然膝の上に圧し掛かった重みに、ちょっぴり驚く。
 前に抱いた時よりぐんと重く感じられたからだ。

 幼い日のカレンは毎週のようにこんな姿勢になっていたから、
そのイメージが残っていたのかもしれない。

 「さあ、始めるよ」
 私の声に緊張するカレン。

 この時、お尻の穴をぎゅっと閉めたに違いなかった。

 ただ、カレンが反抗らしい反抗を起こしたのはそれだけ。
 スカートの裾をいきなり捲っても、声を上げるわけでもなく、
嫌がる素振りは何も見せなかった。

 カレンに限らないが、幼年担当の司祭というのは、子供たちに
とって物心のついた頃からのお付き合い。幼稚園小学校の運動会
や学芸会、誕生会、村主催の催しなど、子供が参加するイベント
には教会代表として必ず顔を出して、お菓子や玩具を配り歩いて
いるからどの子とも顔なじみなのだ。

 そんなこともあって、村人には戸籍上の親が『家の中にいる親』
対して我々は『村の中にいる親』と呼ばれていた。
 こう見えて子供たちには、親が信じる神様との間を取り持って
くれるやさしい人として、普段は慕われていたのだ。

 だからこそ、こうした無理も素直に受け入れられるのだった。

 「さあ、それじゃあ、いくよ」

 ぷっくりとした白い綿のショーツが目の前にあって、私はそれ
を平手で叩き始める。

 ぺた、ぺた、ぺた、という感じ……リズミカルで一定の間隔を
置いて叩くのだが、決して強くは叩かない。

 手首のスナップを使わず、まるで撫でてるかのような軟らかい
タッチだから、気の早い子は、『なあんだこれなら永遠に叩かれ
続けても大丈夫だ』なんて思うかもしれない。

 カレンも当初は悲鳴を上げるわけでもなく、痛みに耐えかねて
体をよじるわけでもない。ごく普通に私と会話ができるのである。

 私はカレンに尋ねる。
 「君がここに帰ってきたのは、いつ以来だったかな?」

 「ここって……教会のことですか?」

 「そうじゃないよ。私の膝の上にさ……」

 「えっ……それは……」

 「あっ、思い出した。君が最後に私の膝に登ったのは小学校の
五年生の夏休みだ。……立ち入り禁止になってた村の池で男の子
たちと一緒に鯉を捕ってるところを水車小屋を管理している万平
さんに見つかって、ここに連れてこられた。あの時だろう。……
覚えてるかい?」

 「……はい、覚えてます。あの時は……たしか、男の子たちは
みんな先に家に帰されたのに私だけなぜかここに連れて来られて
……『ここでしっかり懺悔しろ』って言われて……どうして、私
だけって思って、怖かった」

 「なんだ、よく覚えてるじゃないか。おじさんは明日のミサで
男の子に混じって君がお尻を出すのは可哀想だと思って、それで
ここへ連れて来てくれたんだ。君だってみんなの前でお尻を出す
のは嫌だろう?」

 「えっ!?……ええ、そりゃあ……」
 カレンは、はにかむ。

 今、カレンの顔は床の方を向いていてこちらからは見えないが、
私はカレンの背中側さえ見えていれば、その顔がどうなっている
のか、容易に想像できたのだ。

 ショーツを纏った可愛いお尻はだいぶ大きくなったが、今でも
私の前で笑っているのが分かる。仮に私が鬼のような男だと思わ
れていたら、このお尻だって緊張して固く締まっていただろう。
 それもこれも、叩いてみればすぐにわかることだった。

 私は、そんなカレンのお尻にコツコツと警告を与え続けながら
会話を続ける。
 カレンもまた、懺悔室の緊張から解き放たれたからだろうか、
償いをしている身とはいえ、口だけはよく回るようになっていた。

 「まだ、あの頃と同じように男の子と遊ぶことが多いのかな?」

 「昔ほどじゃないけど……」

 「その中に好きな子はいるの?二宮君とか……」

 「いやだあ~~あいつ、そんなんじゃないもん。いないわよ、
クラスの男の子の中には……」

 「男の子は嫌い?」

 「別にそうじゃないけど、私は、もっと、背が高くて色白で、
たくましくて、教養があって、家がお金持ちで、何でも私の言う
ことを聞いてくれて、困ったことがあっても『大丈夫だよ、僕に
まかせて』って、いつも助けてくれる人がいいの」

 「なるほど、そりゃあクラスメイトじゃ無理だ。………でも、
そんな人がいたら、まず私がお近づきになりたいよ」
 私は、少女の夢を冷静に受け止めたつもりでいたが、やはり、
お腹の中では笑ってしまっていた。

 この年代の少女にとって恋は夢。童話と同じ。現実的な相手は
まだ探さないのだ。

 ただ、次の言葉は私の胸を突き上げる。

 「でも、女子ならいるわよ」

 「お母さんかい?」

 「まさか……バレー部の加山先輩」

 「カヤマ?……ああ、あの背の高い子だね。女の子が好きなの
かい?」

 「好きっていうか、憧れなの。あんな風になりたいなあって」

 「じゃあ、高校はバレー部に入るの?」

 「それも考えたんだけど……あそこ、練習、厳しそうだし……」

 「あのバレー部は県代表の常連だから、そうかもしれないね」

 「そうなのよ。このあいだ練習を見に行ったら、ミスしたり、
さぼってた子がショーツ一枚にさせられて体育館の中を走らされ
てたわ。びっくりしちゃったあ」

 「強い運動部ってのは、そんなものなんだよ。だって、この村
にいたって、かなり厳しいお仕置きがあるじゃないか」

 こう言うと……
 「だって、ここは司祭様だけだもん。他に見てる人はいないし」

 「私なら、いいのかい?」

 「だって……昔から悪いことすると、ずっとこうだったし……
今さら、神様と縁を切るのもいやだから……」

 「なるほど、私は人畜無害ってわけだ。……よし、じゃあね、
私は許されてるみたいだから、ついでにきくけど……オナニーは
いつ覚えたの?」

 「えっ!………………………………………………………………」

 と、それっきり、単刀直入な質問に驚いたのか、それまで多弁
だったカレンが急に無口になった。

 「答えたくないなら無理に答えなくてもいいよ」

 私の許しにカレンのホッとした顔が目に浮かぶ。

 「……さあ、30回が済んだ。これで1回、鞭の数を減らして
あげよう」

 私が言うと、驚いたカレンが叫ぶ。
 「えっ~~~たった1回なの。30回なら3回でしょう!!!
だって、昔はそういう約束だったじゃない」

 「おやおや、そういうことはよく覚えてるんだな。……だけど、
あれは君がまだ小学生だったからで、今は身体だって、こんなに
大きいんだから、その時と同じ条件というわけにはいかないよ」

 「じゃあ、どういう条件だったらいいの?」

 「そうだな……まず、パンツをぬいで、スナップの効いた手で
30回我慢したら、それぞれの罪で行う鞭を3回ずつ引いてあげ
よう」

 「じゃあ、60回我慢したら、6回ひいてくれるの?」

 「いいだろう、その代わり、途中で『もうやめた』というのは
認めないよ。60回のスパンキングは最後まで受けてもらうけど
それでいいかい?」

 「はい」
 カレンはきっぱりと答えた。

 恐らく昔の経験からこちらの方が楽だと踏んだんだろうが……

*********(中篇はここまでです)*********

幼年司祭 (前編)

***********************

  単なる雑記帳と化したブログだけど、まだ覗きに来てくださる
方がいるみたいなので、何か貼っておきます。

 これは、昔、清水正二郎さんという作家さんがいらっしゃって
その人の小説の中に、『懺悔聴聞僧』という役柄が登場する作品
(作品名は失念)があったんだけど、これがいたく気に入って、
自分なりの懺悔聴聞僧を書いてみようと作った作品なの。
 僕はまったく厳しさのない甘ちゃん世界で育ちゃったためか、
真逆の、ストイックな世界に憧れがあるんだ。

***********************

 亀山に来て28年、最初は僕に僧院暮らしなど勤まるだろうか
と危惧していたが、善良な村の人たち守られて、知らず知らずに
時は経ち、今では幼年司祭だなんていう役職までもらっている。

 司祭といっても、これはカトリックのそれではない。この村は
宗教法人亀山教団が管理する村。役職も教団での役職の一つだ。

 『幼年司祭』というのは、早い話、子どもたちのお仕置き係。
そもそもここは村人が全て教団の幹部信者という宗教都市なのだ。
だから、学校の先生、診療所の医師、コンビニの店員……どんな
職種についていても村人は全員が教団職員。マリア様を信奉する
敬虔な信者ばかりだった。

 そんなわけで、親がそうなんだから村の子どもたちも、当然、
教団の教義に従って暮らさなければならないわけで、その厳格な
掟に背いた子を罰するのが、私、幼年司祭の仕事というわけだ。

 幼年と銘打っているが守備範囲は広く、幼稚園から高校生まで。
この村の親達にあっては高校生だって十分に子供。悪さをすれば
当然のごとくお仕置きで対処するのがポリシーだった。

 これは何も家庭だけの話ではない。学校で、教会で、村の公園
でも事情は同じで、先生、牧師、その子と血縁のない村人でさえ
悪さを見つければ、お尻を叩いて差し支えなかったのである。

 子供たちは大人たちが決めた厳格なルールを身体に、とりわけ
お尻に染み込ませて大人になっていく。

 といって、虐待されているという印象は受けなかった。
 教団の教義では10歳までの幼い子は抱いて育てなければなら
ないというのが教団のテーゼで、親といわず教師といわず、近所
の人や道行く人でさえ気楽に子供を抱く。
 村人全員が子育てに参加するとてもフレンドリー環境なのだ。

 ただ、そうやって村の大人たちは、普段、子供たちをわけ隔て
なく愛しているが、その愛はペットに注がれるような盲目的な愛
ではない。
 信賞必罰というか、メリハリがはっきりしていた。

 私が村へ来て一番最初に驚いたのが、晒し台(ピロリー)。
 これは滅多によそ者を見ない村の特殊事情からくるのだろうが、
公園にも、学校にも、いや、各家庭の庭先にさえ、子供をくくり
つけて見せしめとする晒し台が設置されていたのである。

 これは決して飾りや脅かしではなく、村を一回りすれば、低い
垣根越しに全裸あるいはパンツ一つで括り付けられた少女の姿を
毎日のように垣間見ることができる。
 さすがにハイティーンの子にはなかったが、10歳以下の子は
鞭によるお仕置きがない分、こうした見せしめによる体罰が多く、
しかも、なぜか男の子より女の子に多いお仕置きだったのである。

 さて、そんな特殊な村の中での私の生活だが、普段の寝泊りは
教会脇にある牧師館で暮らしている。日当たりの良い1DKは、
決して広くないが一人暮らしの身には必要にして十分なスペース
だ。

 まず朝は、日の上がる時間に起きて、近所の世話好き婆さんが
作ってくれた朝食をあり難くいただくと、その後はしばしの読書。
 でも、10時頃ともなれば最初のお客がやってくる。

 「ピンポン」
 というチャイムは牧師館の私の部屋で鳴るが、それが押された
のは礼拝堂。

 私は簡単な身支度を済ませると、裏庭の芝を駆け足で踏んで、
礼拝堂へと向かう。

 礼拝堂の裏口は古びた木製ドアだがいつも鍵がかけられている。
ここは司祭と呼ばれる人たちだけの専用の入口。一般の人たちは
ここから礼拝堂への出入りができない。
 というのも、ドアを開けるとそこは懺悔聴聞室。超極秘空間に
なっていたのだ。

 懺悔聴聞室というのは一般信者が聖職者に懺悔を聞いてもらう
ための小部屋。懺悔を希望する信者は、通常他の信者が礼拝堂に
出入りしない時間帯を狙ってやってくる。

 電気もなく相手の顔さえよく見えないほどの薄暗い小部屋で、
信者と聖職者が金網越しに向き合ってヒソヒソ話。何やら不気味
な雰囲気も漂うが、ここでは信者のプライバシーが最も尊重され
なければならないから仕方がなかった。

 そんな懺悔聴聞は通常一対一だが、私の仕事場へはお客はたい
てい二人ずれでやってくる。私の場合一人はハイティーンの少女。
もう一人はその子の母親というパターンが多かった。

 「どうしました?」
 私が尋ねると金網の向こうでは少女が唇を紫にして震えていた。
 いろいろな意味で怖いのだ。

 「…………」

 返答はないが誰なのかはすぐに分かる。いくら薄暗い部屋でも
彼女の顔は金網を挟んで私と30センチも離れていないのだから。

 「…………」
 むしろ、そっと隠れて泣いてる顔、嗚咽さえもが分かるほどだ
った。

 彼女の名は藤島カレン。父は、現在単身赴任中で、教団が今、
布教活動に力を入れる愛知県で教区長を努めている若手幹部だ。
一方、村に残った家族は、本人を含め母と妹の三人暮らし。父が
教団のエリート職員ということもあって留守家族も他の村人から
後ろ指をさされるような生活はできなかった。

 この為、母はPTAの役員を務めバザーなどには積極的に参加。
娘も学業優秀で生徒会役員、品行方正のお嬢様だ。一見すると、
非の打ち所のない家族と見られていたが、それを維持する為には
いろんなプレッシャーを跳ね除けなければならない。

 そんな母娘のストレス解消の場が、実はここだったのである。

 「…………」

 「ほら、ほら」
 娘のだんまりに耐えかねて、後ろの母親がその背中をつつく。

 すると、母を振り返って一瞥。今度は、さも仕方ないといった
素振りで私の方を向き直ると……

 「私、オナ……オナニーをしてしまいました」

 15歳の娘がオナニーだなんて、そんなことを他人に語るのが
どれほど勇気のいることか容易に想像がつく話だが、私はそれを
顔色を変えずに受け止める。
 というのも、この問題を彼女が懺悔に来るのは、これが初めて
ではないからなのである。

 「そうですか、確か、3年前にもそんなことがありましたね。
……あの時は、きっと中学という新しい環境で戸惑っているうち
道を外れてしまったものと思っていましたけど………そのうち、
お友だちもでき、学校生活にも慣れてきて、そうした問題は解消
されたのかと思っていましたが、また再発してしまいましたか」

 私が静かに語っていると、母親の真理絵が娘の肩越しに……
 「そうなんでございます。あの時は、司祭様にありがたい鞭を
毎日12回もいただき、三週間貞操帯をはめて、何とか事なきを
得ましたが、今回は手遊びだけでなく、家のお金にも手をつける
ありさまでして、どうしたものかと……ご相談にあがった次第で
でございます」

 「そうですか」
 私は、まず娘の背中の声に応対すると……

 「本当ですか?お母さんの言ってること?」
 今度はカレンに向かって語りかける。

 「…………」
 するとカレンは何も話さず、ただ頷く。視線を合わせたくない
様子だった。

 「そう、それは困ったことだね。3年前は、まだ君も幼かった
から萎縮してはいけないと思いあまり厳しいことしないでおいた
が……独り遊びの悪癖が再発して、しかも今回は親御さんのお金
にまで手をつけたとなると、厳しい処置を取らなければ治らない
かもしれないね」

 「……は、はい」
 カレンの蚊のなくような小さな声、こんな近い場所にいてなお
やっと届くような小さな声が聞こえた。

 見ると、その目にいつの間に落としたのか二筋の涙が光っている。
つまり、私の目の前にいる少女が涙にくれているわけだが……
 それを見た私の心はというと……

 『さすがに女の子。誰に教わらなくても立派に泣けるものだ』
 と、意地悪な気持が沸いてくる。

 実際、その顔は『慙愧の……』とか『後悔の……』というもの
ではなかった。むしろ、それは表向きの顔。その顔の奥から滲み
出る嬉し涙こそが私の関心事だったのである。

 こう言っては世間の人に自信過剰と笑われるかもしれないが、
何十年もお仕置き係を務めていると、だいたい少女の顔色だけで
その心の内というのが分かるようになるのだ。

 恐らくカレンが親の金をくすねたのも、オナニーも本当だろう。
しかし、それが衝動を抑えきれずやむを得ずやったことというの
なら、それは違うと思う。

 彼女は品行方正で成績も優秀、何より極めて理性的な子どもだ。
女の子への体罰だって日常茶飯事というこの学校の中にあっても
これまでお仕置き部屋に呼ばれたことなど滅多にない少数派だ。
それが、この卒業間近になって、こうも簡単に罪を犯すとは考え
にくかった。いや、正確に言えば、カレンが親にバレるような罪
を安易に犯すはずがないと考えるべきなのだ。

 では、なぜそんな優秀な子が、わざと罪を犯してまで罰を受け
ようとするのか?

 それには彼女のもう一つの生活の場、家庭が絡んでいる。
 学校では無事な彼女も、家庭内では感情の起伏が激しい母親に
翻弄されて月に数回キツイお仕置きを受けていることがわかって
いる。

 ケインを使ったお尻叩きや浣腸、お灸や蝋涙落しも家庭で親が
行えば立派なお仕置きなのだ。それが教育的かどうかは別にして、
カレンにとっても両親が行うお仕置きは自分への愛情の一つだと
信じてこれまで好意的に受け止めてきたのだ。

 もちろん、幼い頃はそれでよかった。悪いことをしたらお尻を
ぶたれ、終わったら母の胸で甘える。それだけのことだ。
 ところが、思春期に入ると、幼い頃とまったく同じ事をしても
その衝撃が純粋な痛みとは別の情動を生んでしまう。
 お尻を叩かれるたび体の芯がカアッと熱くなるのだ。

 痛くて、恥ずかしくて、屈辱的で……周囲の状況が全てに最悪
という中で……それは誰にも言えない快感となって身を焦がす。

 しかも、これが札付きのお転婆娘なら、チャンスはすぐに来る
のだが、カレンのように物分かりがいい子供となると、親の方も
大きくなった子供に今さらお仕置きでもないだろうと勝手に判断、
多少の過ちならお仕置きをやめてしまうケースが多い。

 つまり、カレンのような子は、なまじよい子であるがゆえに、
湧き起こった情動を処理をする場所に困ることになるのだ。

 そこで、そんな子が逃げ込むのが空想の世界。つまりオナニー。
そこでは現実社会とは反対に自分が罰せられる側に立ってること
が多い。

 もちろん、それで満足できるなら話はそれでおしまいだが……
ただ、それでも足りないとなると、何とか世間に知られない形で
罰を受ける方法はないかと考えるのである。

 そこで思いつくのがこの懺悔聴聞だ。これなら、クラスメイト
にもばれずに、飛び切りのお仕置きが受けられる。
しかも『あまり酷い事にはならないだろう』という読みだって
ちゃんと働いているのだ。

 つまり、ここで告白する罪は大人たちから罰を受けたいが為の
口実。不幸な少女を演じきることで、お仕置きの後、『だから、
今の私はとっても幸せ』と、逆説的に自分の心を納得させる為の
手段だった。

 よく、野球選手が打席に入る前にバットを二本持ってスイング
しているのを見るが、あれとよく似た心理なのである。

 そんなカレンが今、恐怖と慙愧の表情を浮かべて私の前にいる。

 もちろん、そんなカレンの下心を咎めることだってできるが、
私を含めほとんどの大人たちはあえてそれをしなかった。それは、
こうした経験を積み重ねて少女が女性になると知っていたから。

 誰も大声でそれを主張しないが、大人たちの間には暗黙の了解
事項がある。それは……
 『少女は、愛を受けて成長し、その愛を授けてくれた人の鞭で
大人になる』
 愛だけでも鞭だけでも少女はレディーへと変身しないのだ。

 カレンの母親もそんな事情は百も承知でここに娘を連れて来て
いるはずだった。

 今は、優しい男が増えてしまい、男性がマゾヒティクな感性を
持っていても誰も驚かないが、当時それは変態扱い。
 男は全員生まれながらにサディスティクな感性を持っていると
信じられていた。

 ということは、一方の女性はその反対でなければならない。
 サディスティックな男性に身を任せて人生を楽しむというなら
女性はマゾヒティクな感性を磨かなければならないことになる。

 ならば、子供時代、お仕置きで来るべき結婚生活の予行演習を
しておくのもそう悪いことではないのではないか……
 大人たちは、口にこそ出さないもののお腹の中ではそう考えて
いたのである。女の子は少しぐらいマゾヒティクな方向で躾けた
方が、将来は幸せに暮らせると……。

 キャリアウーマン志向の現代の女性には理解不能だろうけど、
男がまだ雄雄しくて一人で家の家計を支えられるほど稼ぎ出せる
時代にあっては、それは不思議でも何でもないことだったのだ。

 それはともかく、私もまた彼女の気持に合わせて演技する。
 さも困ったという顔して考え込み、その後、こう尋ねてみた。

 「お母さんの財布からお金を盗んだのは、これが初めてのこと
かな?」

 「…………それは…………」

 彼女が答えにくそうに口ごもったので答えは一つだ。

 「そう、前にもあったんだ。その時はどうしたの?」

 「どうしたって……」

 「そのことがお母さんにバレなかった?……だって、ここへは
来なかったよね」

 「バレました……」

 「そう、じゃあ叱られたでしょう?」

 「……はい」

 懺悔室は広い礼拝堂の片隅にある。厚い暗幕に囲われていて、
懺悔する側とそれを聞く聖職者側の二つの部屋に分かれている。
二部屋あるといっても広さは共に電話ボックスくらいしかなく、
金網を介しておでことおでこがくっつきそうな距離で話すのだ。

 しかもこんな話、誰だって明るくは語れないから、声も自然に
ボソボソってな感じに……まさに密談という感じだった。

 本来こうした懺悔は大人なら一対一で行われるのが普通だが、
子供の場合は母親が後見人として狭い部屋に入り込んでくること
も多くて、この日も最初から娘の背後には母親が控えていた。

 その母親が、じれったいと感じたのだろう、娘の代わりに口を
開いた。

 「申し訳ありません司祭様。最初にこの子が私の財布からお金
を抜き出したのはまだ受験の前のことでして、その時は、きっと
受験でストレスがたまっているのだろうと様子を見ておりました」

 「では、オナニーの方も……」

 「同じでございます。受験にさわっては……と、そればかりを
懸念しておりまして……でも、その後も、盗み癖と手遊びは続き
ますので心配になりまして……」

 「では、その間、家でのお仕置きもなさらなかったのですね」

 「最初の時は見逃したのですが、二回目からは家できつく叱り
ました」

 「厳しく?……それは折檻といったものでしょうか?」

 「はい、二回目は私がかなり厳しく……三回目は主人も手伝い
まして……」

 「お父様も……で、どのような?」

 私が尋ねると、その瞬間、カレンの顔が真っ赤になった。
 そこで……

 「それは……」
 と、話しかけた母親を遮り……
 「あっ、お待ちください、カレンさんに尋ねてみましょう」
 私は、その答えをカレンに求めたのだった。

 歯切れのよい母親についつい乗せられてしまったが、こうした
ことは本来、カレンが自らの行いを懺悔する中で説明しなければ
ならないことなのだ。

 カレンは自ら知っている全てのことをその口で私に告白しなけ
ればならない。どんなに辛い体験も、どんなに恥ずかしい思いも、
何一つ隠しごとをしてはならない。これがここのルールだった。

 「…………、…………、…………」
 心を落ち着かせるための少し長い沈黙の後、カレンは重い口を
開く。

 「最初は、お小言だけだったけど……二度目は……お母さんが
お仕置きすると言い出して……私、もう子供じゃないって言った
んだけど………………」
 少女は口惜しそうに下唇を噛んだ。

 「君はまだ子供だよ。子ども……」
 私は念を押す。
 「体が大きくなり、少しばかり筋道の通った話ができるように
なったとしても、15歳の子を大人だと認めてくれる人はこの村
にはいないんだ。よそではしらないけどね、少なくともここでは
そういう決まりなんだ。だから、お仕置きだって受けるだろう?
大人だったら刑務所行きだ」

 私は自ら諭しておいて思わずその場に視線を落とした。
 間近で見るカレンの顔が初々しいはにかみで赤く染まっている
のを見て、こちらも心臓がキュンと絞られたのだ。

 プロとしてはそんなこと顔に出してはいけなかった。

 「………………」
 次に顔をあげたとき、カレンは後ろを向いていた。
 何やらそこにいる母に助けて欲しいといった視線のように見え
だが……。

 「………………」
 母は首を振って拒絶する。

 懺悔室で話したことは外部には漏らさない約束になっている。
たとえ、親兄弟や学校の先生でもそれは守られていた。その信頼
がないと懺悔に来る人(子)などいないからだ。

 そして、懺悔する側にもメリットがある。もし、その事が後に
公となり罪に問われることになっても『司祭様に懺悔しました』
と証言すれば自分にとって不都合な多くの秘密をお蔵入りにする
うえに、受ける罰も少なからず軽減される約束になっていたのだ。

 もちろんこれはローカルルールなのだが、日常的なトラブル、
とりわけ子供の罪については国の法律よりこうしたやり方で処理
する方がこの村では一般的だったのである。

 そのため、懺悔室では全てにおいて真実が語られなければなら
ない。嘘をついて罪を免れようとする不届き者を出さない為にも
これは絶対の条件だったのである。

 もし、嘘をついて懺悔しようものなら、こちらも国の法律とは
関係ないところで情け容赦ない体罰、辱めの刑が待っているのだ。

 だから、カレンはこの件で両親から受けたお仕置きの数々を、
洗いざらい私に話さなければならないわけだが、そうは言っても
恥ずかしかったのである。

 「お父様から鞭2ダースです」

 少し投げやりに話してカレンは下を向く。こんなこと、本当は
話したくない。そう思ってるのがありありと分った。

 「もっと詳しく聞きたいんだけど……そう、洗いざらい」

 「えっ」
 カレンは驚いたように一瞬顔をあげたが、その顔はすぐに横を
向いてしまう。

 「だって、お父様がいきなり部屋に入って来て2ダースの鞭を
振るったら、それでおしまいってことじゃないだろう?」

 「それは……そうです……けど」

 「お母様は何もしなかったのかな?」

 「…………」
 カレンは激しく頭を振る。
 それは肩まで伸びたロングヘアーが纏いのように振られて顔が
隠れてしまうほどだった。

 「こういう時は……お母様が、まず最初に何かするんじゃない
のかね」

 「えっ!………………あっ、はい」
 『えっ!』という声がして、しばらく間があったのち、『あっ、
はい』という言葉で締めくくられた。
 さっきより小さな、か細い声だ。

 「……………………」
 それからはわずかに鼻をすする音以外何も聞こえてこない。

 うつむいた少女の簾のような前髪の奥で光るものが、真珠の涙
だとは知れていたが、私も役目柄、妥協はできない。

 懺悔聴聞僧というのは単なる聖職者ではない。その子が犯した
罪の償いを、非公開にして、かつ許すことのでる立場にあるのだ。
だからこそ一連の出来事の全てを知っておかねばならなかった。

 そうでなければ『この子はすでに神への懺悔を済ませており、
これ以上のお仕置きは無用です』というお墨付きを渡せなかった
のである。

 そんな私の立場を彼女も理解した……というより決心がついた
のだろう。
 ある瞬間、顔がきりっと締まる。

 「最初、母から浣腸を受けました」

 「そうですか。それは純粋にお仕置きとして?それとも、罰を
受ける準備としてですか?」

 「それは……」
 カレンが思わず後ろを振り返ったので……

 「分からないのなら、それでいいですよ。あなたが思った通り
に答えればよいのです。あなたはお母様からお浣腸………あっ、
そうだ、あなたは女の子ですからね、やっていただく方に敬意を
払う意味からも『浣腸』ではなく『お』をつけて『お浣腸』って
よんだ方がいいですね」

 「はい、ごめんなさい。お母様からお浣腸をいただきました」

 私が細かなことを指摘すると、カレンも素直に応じた。

 「そうです。お仕置きは、どこまでもあなたの事を思って目上
の人がなさるわけですから、『やられた』『された』は失礼です。
『していただいた』と言わなければなりません。学校でもそれは
習ったでしょう?」

 「はい、司祭様」

 「よろしい、ここではそうした従順さが、あなたを幸せに導く
んですよ。なぜだか分かりますか?」

 「いいえ」

 「ここは教団の中でも徳の高い人たちで構成された村ですから、
他のどんな村と比べても民度が飛びぬけて高いんです。ですから、
相手が誰であろうと、その人がこの村の人なら、あなたの立場や
気持を十分に察してくれるはずです。……大事なことは一つだけ」

 「一つだけ?」

 「そう一つだけ。何だか分かりますか?」

 「…………」
 カレンは首を横に振った。

 「それは嘘をつかないこと。相手にもそうですが何より自分に
嘘をつかなければ、それだけであとは何もしなくても、あなたは
自然に幸せの方向へと導かれます」

 「うそ……今どき晒し台のある村なんて……まるで中世……」
 カレンの口から思わず本音が飛び出す。

 しかし、それこそがここが幸せな村と呼ばれる証だった。

 「(はははは)嘘じゃありませんよ。あなただって、この村に
いるだけで幸せになります……晒し台ですか?……でも、それで
噂を立てられた子はいないはずですよ。日曜日のミサの会場では
神父様にお尻を叩かれる子がたくさん出ますが、それを理由に、
からかわれた子がいますか?いないでしょう?民度の高いこの村
では、どんなに厳しいお仕置きがあった後でも、それがからかい
や虐めに発展することがないんです。だから、大人たちも心置き
なくお仕置きができるし、よい子が増えるというわけです」

 「……????……」

 「(はははは)よそで暮らしたことがないから分からないです
ね。でも大人になって他の街や村で暮らしてみれば分かります。
お仕置きのできる村がどんなに幸せな村か……」

 私は持論を展開してカレンを説得しているつもりが難しい顔を
している彼女を見て思わず吹いてしまう。

 そんな私の顔を見て、カレンもつられて笑顔になった。

 「……さてと、それではこれからも正直に答えてくださいね」

 「はい、司祭様」
 珍しく涼やかな声が礼拝堂の天井まで届いた。

 「お浣腸を受けた時、あなたはどんな姿勢でしたか?仰向け?」

 「はい」
 小さい声だが、ほんの少し元気が戻ったようだ。

 「赤ちゃんがオムツ替えする時によくやる、あのポーズだよね」

 「そうです」

 「君の歳では恥ずかしいだろう?」

 「今じゃなくても、ずっと前からものすごく恥ずかしいけど、
お母さんがそれ以外の姿勢は認めないって言うものですから…」

 「周囲にいたのはお母さんだけ?」

 「当然、そうです。……でなきゃ、自殺します」
 カレンが語気を強める。そこには『もうこんな話させないで!』
という思いが込められていた。

 「おやおや、自殺だ何て穏やかじゃないな。神様は自殺した子
の面倒まではみてくださらないよ。宗教の時間に習っただろう?」

 「はい、わかってます。そんなこと」
 今度はちょっとふて腐れぎみに答えた。

 「で、浣腸液は?……石けん水?それとも、グリセリンかな?」

 「グリセリンです。うちは厳しくていつもグリセリンなんです」

 「量は?……どのくらいだったの?」

 「………………」
 私が尋ねると、カレンは再び下を向き、恥ずかしがった。

 でも、こんな質問にもカレンは答えなければならない。
 もちろん、こんな懺悔の席で中年オヤジに語るのは嫌だという
のなら、日曜日の子供ミサのあと、みんなの見ている前で神父様
から鞭打ちというのでも、それはかまわないわけだが、そちらを
選択する子は稀だった。
 
 「だいたい100㏄くらいです。家にあるガラス製の浣腸器は
50㏄用なので二回やると、100㏄ですから」

 きっと娘の窮状を見かねたのだろう、私の質問に答えたのは、
カレンの背中に張り付く母親の方だった。

 「お母さんは黙ってて……これは娘さんに答えてもらわないと
意味がありませんから」

 私は心配性の母親に注意する。
 もっとも、こうした情報は懺悔が始まる前に直接その母親から
聞き取って情報を得ている。娘がどんな罪を犯したのか?それに
対し家ではどんなお仕置きをしたのか?懺悔の後は、どんなお仕
置きを希望しているのか?などなど私のノートには細かな情報が
びっしりと書き込まれていた。私はそれを見ながら子どもたちの
懺悔を聞いていたのである。

 「さて、と……それは中学生になってから多くなったのかな?」

 「なりました。小学生の頃はイチヂク浣腸でしたから」

 「どのくらい我慢したの?」

 「小学生の時は長くても10分だったけど……今は、20分も
我慢しなきゃいけないんです」

 「我慢できたのかな?」

 「………………」
 私の質問にカレンの顔が強張る。
 言葉は発しなくてもそれは答えたのと一緒だった。

 「オムツは?穿いてたの?」

 「……………………はい、今日は許さないからって言われて」
 しばらく間があって、蚊の鳴くような声が返って来た。
 それが今の彼女には精一杯の答えだったに違いない。

 「そのあとは……」

 私がその先を尋ねると……

 「その先って……」
 カレンはとぼけた。

 『その先は言いたくない』ということなんだろうがそれを許す
わけにはいかなかった。私の仕事はカレンの行いのすべてを彼女
自身から聞き出して、その行いに最もふさわしい処置を施すこと。

 彼女にとって私は検察官であり、弁護士であり、裁判官だった。
そして、処置が決まった後は、刑吏であり、保護司でもある。
 そう、私は彼女の為に一人何役もこなさなければならなかった
のだ。

 「お父さんが帰って来るまでベッドの上に仰向けで寝て、両足
を高く上げて待ちます」

 「お浣腸の時と同じ姿勢で待ってるわけだ。恥ずかしいよね、
それは……女の子だもの」

 「はい」

 「パンツを脱いで待つんだろう?」

 「ええ」

 薄暗い小部屋、網目の細かい金網越しでは相手が泣いているか
どうかはっきりと見る事はできないが、その息遣い、鼻をすする
音などから泣いているのを必死に隠そうとしているのがわかった。

 この恥ずかしい姿勢をとって父親は待つ習慣は何もカレンの家
だけではない。この村の中では、ごく一般的な女の子のお仕置き
となっていた。ただ、あらためてその様子を自分で語るとなると
それはまた別の話なのかもしれない。

 「風邪ひかなかったかい?」

 私が尋ねると、再び母親が娘の肩越しに声をかけてくる。
 きっと、娘の窮地を見ていられなかったのだろう。

 「大丈夫です、司祭様。この子がその姿勢になるのは、主人が
玄関のドアノブを回した後ですから……その時、私が足をあげる
よう指示するんです」

 「なるほど、私の子供時代は母親から『オシオキだ』と言われ
延々恥ずかしい姿勢のまま待たされて、風邪をひくこともありま
したが、最近はどこの家庭でもそのあたりは合理的みたいですね。
いいことだと思いますよ」

 「ありがとうございます」
 母親が礼を言う。

 本当は、本人と私だけで進めていかなければならない懺悔だが
あまりに杓子定規だと女の子というのは意固地になるからそこは
臨機応変に対応した。
 実際、自分の恥ずかしい情景を女の子に語らせるのは酷だった。

 「それで、お父さんはあなたのそんな姿を見て、どんな判断を
されたのかな?」

 「お父さんがイスに座って、そのお膝の上に寝てお尻叩きです」

 「いくつぶたれたの?」

 「50回です」

 「痛かった?」

 「………………」
 カレンは答えない。
 しかし、泣いているわけではなかった。

 細かな金網の奥にある少女の瞳は、私に向かって『当たり前の
ことを聞くな』と怒っているようにさえ見えたのだった。

 実際、父親のスパンキングがどれくらい痛かったのか、経験の
ない私には分からないが、ほとんど家庭で、幼児のころから親に
お尻を叩かれ続けているこの村の子どもたちは、たとえ中学高校
となっても両親の膝にうつ伏せにされただけで顔が青ざめるのだ。

 幼い日の恐怖体験が身体が大きくなった今でも心に残っている
ためで、中学生の男の子でも親の膝の上にうつ伏せにされた瞬間、
気が違ったように泣き叫んだり、恥も外聞もなく親に許しを請う
子が珍しくなかったのである。

 だから親の方だって、特殊な趣味でもない限りそんな哀れな子
の尻を強くは叩かない。

 特に異性である父親は母親以上に娘に対しては気を使うようで、
私の過去の経験から推察するに、50回程度のスパンキングなら、
結果はお尻が程よく赤くなる程度。ウォーミングアップで終了と
いったところだ。

 しかし母親の話によると、この時のカレンは、ドアの向こうで
立ち聞きしている妹たちが満足するほど大きな悲鳴をあげたよう
だった。これはこの時だけ父親が特別強く叩いたということでは
ない。
 『父親のお尻叩きはとっても痛い』という幼児期の摺り込みが
高校生になったカレンに子供のような悲鳴を上げさせるのだった。

 また、子どもというのは不思議なもので、自分もまたお仕置き
される身でありながら兄弟姉妹のお仕置きを見たり聞いたりする
のは大好きである。
 きっと父母の愛情を奪い合う関係にある彼らはライバルの失態
が面白くて仕方がないのかもしれない。

 世間では、他の兄弟にとっても他山の石となるようお仕置きを
公開する親がいるが、『明日はわが身』などというネガティブな
格言は、実は大人だけのもので、子供に求めても徒労に終わるの
が普通だった。

 私たちが日曜日のミサの後、悪さをしたり、怠けたり、規則を
破った子供たちをお仕置きとして公開処刑しているのも、べつに
他山の石を期待しているのではない。
 これはあくまでリクレーション。『異性の裸を見てみたい』と
いう素直で素朴な子供たちの欲求に答えているにすぎないのだ。

 そして、それは『子どもは身も心も無垢なままに育て、全てに
隠し事を認めてはならない』とする教団の教えからもきていた。

 さて、ウォーミングアップが終われば、次は本番だった。

 「お父さんのお仕置きはそれだけだった?」
 私が意地悪く尋ねると、金網の向こうでカレンがすねているの
が分かる。

 「………………」

 ごく幼い子ならいざ知らず、もうすぐ中学校も卒業という子が
お膝の上でのお尻ぺんぺんだけですむはずがないからだ。

 もちろん、その後カレンが両親から何をされたか、私が視線を
落とせば、そこに広げられたノートにそれは書いてある。
 しかし、それを見て私がしゃべったのでは懺悔にはならない。
あくまでカレンが自らの口で語る必要があったのだ。

 「鞭で二ダースぶたれました」

 「ほう、それは大変だったね。痛かったでしょう」
 私は、この情報に初めて接したかのような顔で答える。

 「はい……」

 「どんな鞭だったの?」

 「ゴムのパドルです。ベッドフットにうつ伏せになって……」
 カレンが渋々答える。さながら答えてあげてると言わんばかり
の鼻息がこちらまで伝わってくる感じだった。

 「そう、怖かったでしょう」
 と問うと……
 「ええ、まあ……」
 気のない返事が返ってくる。

 これは大したことないという意味ではない。恐ろしい事実とは、
正面から向き合いたくないという彼女の心情を表していた。

 父親は自分の膝に乗せて平手でお尻を叩く時には気を使うが、
こうやって鞭を使うときは、男の子の8割くらいの力。けっこう
しっかり叩く父親が多いのだ。

 というのも、女の子の場合、父親が使う鞭はたいていがゴム製。
少しぐらい強めに叩いても傷が残る心配がないというのだろう。
さらに言うと、膝の上に置いた時は気にしていた自らの体の変化
を今度は気にせずにすむというのもその理由の一つのようだった。

 どこの家の娘たちもこんな時には、ベッドフットに腰を乗せて
両足は爪先立ち。ふかふかベッドに顔を沈めると両手でしっかり
シーツを掴んでその時を待っていなければならない。
 ちなみに、お浣腸を受けてうんちを我慢する時も、これと同じ
姿勢。
 ベッドフットはお仕置きには欠かせない器具だったのである。

 さて、そうやって動きを止められたところへ男がいよいよ本性
をあらわにしてこちらへとやってくる。
 これが怖くないはずがなかった。

 「いくつぶたれたの?」

 「お母さんのお財布からお金を盗んだことで12回と……えっ
……そのう……オナニーをやったので12回でした」

 カレンは勇気を振り絞って答える。

 「そう、……それで、お母さんのお財布から取ったお金で何を
買ったの?」

 「何をって……友だちと街まで行って……一緒に映画観て……
デパートでブローチ買って……」

 「それだけで、使い果たしちゃった?」

 「……(うん)……」
 カレンが頷く。

 どうやら、カレンが母親からくすねたお金はそれほど大金では
なかったみたいだ。

 そう思っていると母親がカレンの背中越しに……
 「あと、本を買ったみたいなんですが、これがいやらしい本で
……それで……そのう~それでオナニーを……」

 「なるほど、その本というのは……写真集とか……絵画集?」

 「いえ、文庫の小説でして……」

 「小説?……作者は?」

 「たしか、清水正二郎とか……」

 『なるほど……奴の本か……』
 私は心の中で思う。清水正二郎氏はその当時多くの性豪小説を
執筆していたその道の第一人者で、西洋の鞭撻小説風なのものも
多かったが、さて、翻訳物と見えて、実は自身の純粋な創作物と
いうケースも多かったようだ。

 『こんなものを読んでオナニーをしているようなら、こうした
催しもまんざらではないのかもしれないな』
 私は、それまで許してしまおうという思いを。ここで修正して
しまう。

 『この子も、もうそんな時期になったのか』
 私はカレンの幼い頃を知っているだけに感慨深げだった。

 「たしかに、彼の作品は誰でも読める平易な文章だから面白い
のかもしれないな」

 「先生!」
 思わずカレンの背中から眉をひそめた『先生』の掛け声。

 「司祭様は清水さんの小説を読んだ事があるんですか?」
 カレンも意外だったのか、思わずといった顔で私を見つめる。

 「研究のためにね。ここにはオナニーの問題で訪ねて来る子も
多いから何でも一応どんなものかは知っておかないと……」

 私は涼しい顔で応対したが、これはあくまで立場上の嘘。
 私だって若い頃はポルノ小説のたぐいを読み漁っていた時期が
あるのだ。

 「女の子のオナニーがここでは禁止されてるのは知ってるよね。
しかも、当時、君はまだ小学生だったから、ご両親も心配されて、
最初は担任の先生にご相談されたんだけど、そうした事は倫理の
問題だからって、私の処へお話が回ってきたんだ。あの時のこと、
まだ覚えてるかい?」

 「はい」

 「どんなお仕置きだった?」

 「………………」
 私の質問にカレンの顔が真っ赤になる。

 恐らくその時の情景がフラッシュバックしたのだろう。
 これまでも恥ずかしがって紅潮するカレンの顔は見てきたが、
これほど赤い顔は初めてだった。

 それでも、言わなければならないと感じたのだろう。ポツリ、
ポツリと語り始めた。

 「最初にお浣腸をしていただきました。……たくさん我慢した
けど……でも、我慢できなくて……結局、オムツにしちゃって…
…罰として、お股の中にお灸を据えられて……」

 「いくつ据えられたか、覚えてるかい?」

 「たしか……三つです」

 「そう、ちゃんと覚えてたんだ。偉い、偉い。中にはせっかく
してあげたお仕置きを忘れる子がいてね。そういう子は再び同じ
過ちを繰り返すから困りものだ。今度はもっと厳しいお仕置きを
しなくちゃならなくなる。あの時は、会陰という場所に一箇所と
大淫唇に二箇所据えてあげたの。ここでお股にお灸を据える時は、
たいていその三箇所が多いんだ。……それからどうなったの?」

 「それから……あとは……司祭様のお膝で、お説教されながら
お尻を百回叩かれて……テーブルに乗せられて……鞭のお仕置き
だったんですけど……痛くて、飛び降りちゃったから……今度は
お母さんに頭を、お父さんに足を押さえてもらって……」

 「鞭のお仕置きは飛び切り痛いからね。紐やベルトで縛っても
いいんだが、無機質なものより君が愛してる人に抑えてもらった
方がより効果があるだろうと思ってね、やっていただいたんだ。
お仕置きというのは愛を形にしたものだから、痛みの量より誰に
やってもらったかが大事なんだ。カレンは私からお仕置きされる
のは嫌いかね?」

 「えっ!?」
 カレンは予期しない質問に驚き少し狼狽しているみたいだった。

 「私が嫌なら何も無理することはないんだ。他の懺悔聴聞僧の
ところへ行ってもいいんだよ」

 私が水を向けると……
 「…………」
 カレンは激しく首を振る。

 幼い頃からお仕置きのためだけに連れて来られる場所には違い
ないが、それでも、未知の恐怖よりはましということだろう。

 「それから二週間、陰部に手が触れないように貞操帯を着けて
貰ったけど、あれもよく頑張った。女の子は我慢するってことが
大事なんだ。わかるかい?」

 「はい」

 「辛い思い出を蘇らせてしまったかもしれないけど、女の子の
場合、オナニーは慎んだ方がいいからね。君だけじゃないんだよ。
最初にわかった時点でちょっぴり厳しいことをするんだ」

 「……わたし……あれからは、ずっとやってません」
 震える、怯えた声が私の耳に届く。

 これはもちろん嘘。男の子であれ女の子であれ一旦味わった蜜
の味はそう簡単に忘れることができない。
 カレンだって、貞操帯が外れた後は幾度となく楽しんだに違い
なかった。

 ただ、女の子の場合、あまり幼い頃からオナニーを続けると、
自然とその顔、その仕草から清純さがなくなり、男の目からは、
いつも物欲しげにしている女と評価を下げてしまう。
 それは親の立場からすると『良家に嫁がせ専業主婦で夫婦円満
に暮らす』という人生設計を危うくしかねない大問題だったのだ。
 だから良家の娘であればあるほど、『たかがオナニー、若気の
至り』ではすまなかったのである。

 「わかってるよ……今回、たまたま手が滑ったんだろう」

 私がそう言って彼女を見つめると……カレンは恥ずかしそうに
伏し目がちになる。

 この自然な仕草が悪癖に染まった子にはできないから、カレン
はまだまだ初な生娘として大人たちから認知されているのだった。
 この財産をカレンの両親、学校の先生たち、そして私は守って
あげなければならないのだ。

 「ただね、君がオナニーをやってしまったことに違いないわけ
だからね……その事は知ってると思うけど、女の子というのは、
男の子以上に厳しい罰を受けなければならなんだ」

 「どうしてですか?どうして女の子だけ厳しいんですか?」

 「ほう!」
 カレンの言葉に私は目を丸くした。

 常に『清楚、勤勉、恭順』が求められる村の女の子たちの中に
あって、目上の私に議論を吹っかけるというのは大変珍しいこと
勇気もいることなのだ。
 だからその瞬間だけはたしかに驚いたが、それって、彼女が、
子供から大人へと成長した証のようなものだから、それ自体は、
べつに苦にはならなかった。

 「それはね、男の子と女の子では神様がお創りになられた体の
成り立ちが違うからだよ。それに従って社会での役割も違うよね」

 「はい」
 カレンが静かに頷く。
 ここまでは彼女にとっても問題のないことだったのだ。

 というのも、この村では良妻賢母が当たり前の社会。女の子が
本気になって働くなんて、恐らく未亡人になった時ぐらいだろう。

 「女の子は、身体の構造上、雑菌が体に入りやすいものなんだ。
少なくとも元気な赤ちゃんを産むまでは完全な健康体でいなきゃ、
せっかく新しい命を授けてくださった神様に申し訳ないだろう?」

 「…………」

 「それに……これは女の子の君には理解できないかもしれない
けど、男の子と女の子では、欲求の度合いが違うんだ。女の子の
欲求は、我慢しようとすればできる程度のものだけど、男の子の
場合は無理して止めるとかえって心身を蝕んでしまうほどの強い
もので、自分の意思ではどうにもならない部分もあるんだよ」

 「…………」
 カレンは納得していなかったが、男の身勝手、不条理な理屈、
と思われても、当時の社会的な常識ではそう答えるしかなかった
のである。

 私はカレンの熱を冷ますため少しだけ間を置いてから、彼女に
こう次げたのである。

 「カレン、君が元のよい子に戻るためには、鞭によるお仕置き
が必要だと思うだけど……どうだろう?」

 「……はい、わかりました」
 私の提案に、カレンは割とはっきりした声で答えた。

 「お母さんのお金を盗んだ事で鞭12回。オナニーについては
女の子のことだから厳しいよ。鞭18回が必要だと思うんだが、
どうだろう?……受けるかね?」

 「はい、受けます」
 その声は健気とさえ思えたのである。

 こうして懺悔に来る子は最初から親に説得されて来る子が多い。
親は、とにかく本人の為に罰を受けさせたいのだ。そして本人も
また、ミサの会場でお尻を出す屈辱を思えば仕方がないと思える
のかもしれなかった。

 だから私の処へ懺悔に来た段階でお仕置きは既定の事実なのだ
から今さら抵抗しないというわけだ。

 ただ、そうは言っても鞭打ちを宣告されて平常心でいられる子
は少ない。なかには両手を組んで祈りを捧げるために設置されて
いる懺悔室の小さな机にしがみ付いて離れない子や刑の執行の為
に懺悔室の扉を開くと、私の両足に抱きつき、今さらながら哀れ
みを込めた謝罪を繰り返す子もいる。

 人間、誰だって往生際は悪いのだ。
 ただ、いったん決心してしまうと、実は男の子より女の子の方
が度胸が据わっているのも不思議なことだった。

 カレンも、私が懺悔室の扉を開けて迎えに来てた時、ことさら
慌てふためく様子は見せなかったのである。

 「大丈夫かい?……立てる?……長い時間膝まづいてたからね。
足が痛かったら、少しここで休んでからでもいいよ」
 私は心配気げに寄り添っていた母親を気遣ってカレンを丁寧に
エスコートする。

 母親にとっては、自分で決めたお仕置きであっても、それは、
あくまでカレンを思っての事。いくら多くの村人から信頼されて
いるとはいえ、娘のお仕置きを赤の他人に任せるのを心配しない
親などいなかった。

 『とにかく厳しくなければ効果がないのは理解できる。しかし、
厳しすぎて、その後、ぐれたり萎縮したりしないだろうか』
 母親はそう思っているに違いなかった。もしそうでなければ、
私は虐待の片棒を担いでいることになる。

 私は礼拝堂から続く長い廊下をカレンと一緒に歩いて懲罰室へ
と案内する。
 そこは地下室。頑丈なコンクリートの壁や分厚い扉に守られて
どんな悲鳴も外へは漏らさない構造だ。

 誰がよんだか、別名を『鉄の処女』。

 悪名高き拷問器具と同じ名前をいただくこの部屋は入室条件が
10歳以上となっているが、誰もがカレンのように『おしとやか』
とは限らない。まるで幼児のようにお尻を床に着けて必死の抵抗
を試みる者やもの凄い嬌声をあげながら入室する子もいる。

 だから、素直に入室してくれた子には必ずその子を抱きしめる
ことにしていたのである。

 思春期の娘だ、普段ならむくつけき男の抱擁など断固拒否する
ところだろうが、それだけここが恐ろしい場所だと知ってるせい
だろうか、拒否する子はほとんどいなかった。

 部屋に入ると正面に大きな女神様の油絵がある。
 『慈愛』という題がついているが、この女神様、キューピット
を膝に上に抱いてお尻を叩いている。
 
 そもそもお仕置きは慈愛から起こるもの。虐待ではないという
メッセージなのだ。

 そうはいっても、この部屋にある色んな器具や道具は幼い子を
黙らせ、震え上がらせるには十分な装置だった。

 お尻を叩くためだけに作られた『うつ伏せ用お尻叩きテーブル』
をはじめ、恥ずかしい姿のまま身体を固定する『浣腸用ベッド』
や『お灸用ベッド』。コーナータイムの時、膝まづいた足の脛に
敷く『洗濯板』だって子供にとっては怖いものの一つだ。その他、
事情によっては『導尿』や『蝋燭責め』なんてことも……

 まさにこうしたことは巷でならSMの域なのかもしれないが、
その子の親はもちろん、学校の教師、聖職者……この村の誰一人
としてこれをSMと呼ぶ者はいなかった。
 これはあくまで懲罰、子供用のお仕置きだったのである。

 だから、いくら厳しくても、将来のある子ども相手に痕が残る
ようなことまではしないのだが、逆に、子どもであることを理由
にしたハレンチな体罰は多くて、ここにやってきた子どもたちの
大半が、大人たちの前では身体のどんな場所も隠すことを許され
ないと悟ることになるのだ。

 男女は問わない。ローティーンの子はもちろんハイティーンの
娘でもそれは同じだったのである。

 実はカレンがこの部屋を訪れるのは何も今回が最初というわけ
ではなかった。最近こそご無沙汰だったが、小学四年生から中学
一年生頃までは、一学期に一回くらいのペースでお世話になって
いた。

 テストの点が悪い。親や教師に反抗的な態度を取った。友達と
喧嘩をした。卑猥な落書きが見つかった。等々、理由は様々だが、
女の子の場合はさらに『身だしなみがだらしがない』というだけ
でも立派なお仕置き理由だったのである。

 もちろん、これはカレンが特別というのではない。この村では
男女を問わず第二次性長期が始まるころを狙って仕付けを厳しく
する。

 各家庭で、学校で、教会で、大人たちの申し合わせがなされ、
子供たちにはきちっとした生活態度が求められる。そしてそれが
ちゃんと出来ているのか、常に大人たちの目が光っていたから、
普段は問題ないように見える子供でも、どこかで引っかかって、
ここに送られてくるはめになるのだった。

 つまり、この年代はお仕置きラッシュ。
 一学期に一回どころではない。月に一回、十日に一回、はては
先生に目をつけられたお転婆さんだと三日にあかさずということ
だって……。
 お猿さんのようにお尻はいつも真っ赤々で少女らしい白い肌に
戻る間もない子が沢山いたのだった。

 そんな子に比べればカレンはごく普通のお嬢さんだ。

 しかし、そんな厳しい時代も中学二年生からは徐々に自主性を
認められるようになるため、お仕置きの回数も減って、この部屋
ともご無沙汰になる子が多くなる。

 カレンもそんな一人だったわけだが、だったらこのままずっと
この部屋と関わらず過ごせるのかというとそうはいかなかった。

 15歳になろうが、18歳を越えようが、たとえ22歳で大学
を卒業しても女の子は女の子。お嫁に行くまではその家の子供に
違いない。
 そこで、今回のような事があると、幼い日と同様、暗くて狭い
懺悔室で司祭の臭い息を嗅ぎながら懺悔して、あげく二度と行き
たくないと思っていたこの部屋へ連れ戻されるはめになるのだ
った。

 カレンは部屋に入るなり、私の助手となってお仕置きを手伝う
シスター・マーサを見つける。
 すると、「こんにちわ」と挨拶した。

 たしか三年前、カレンが最後にここを訪れた時は、ドアの前に
立っただけで顔面蒼白。唇が紫色に変色し、全身に鳥肌をたてて
震えていた。とりわけ膝が笑っている姿がまるでおしっこを我慢
しているように見えて思わず笑ってしまったのを覚えている。

 幼い子の事である。たとえ過去に何度か経験があったとしても、
自分を責め立てるおどろおどろしい器具を目の当たりにすれば、
その瞬間、足がすくみ、頭の中は恐怖でパニックとなり、自分は
これからどうなるんだろう、という思いだけが心の中を駆け巡る
ことになるのだ。
 自分の事で精一杯、というのが本当のところかもしれない。

 そんな幼い日の思い出に比べると今回は自分をお仕置きする人
に挨拶までしたのだから、カレンもそれだけ大人になったという
ことなんだろう。

 しかし、それだけ大人になったということは羞恥心もそれまで
以上ということで……私は付き添うカレンの母親に訪ねてみた。

 「お母さん、カレンは家を出る時、用を足してきましたか?」

 「はい、懺悔の時はお仕置きをいただくこともあるからトイレ
にだけは必ず行っておくようにと……」

 「それは、グリセリンを使ってですか?」

 「はい、日曜日のミサに出かける時は、いつもそうしています
から……今回もたぶん……」

 「たぶんですか……では、ご覧になりましたか?浣腸している
様子とか、トイレに駆け込んだ姿とか」

 「いえ、今日は忙しくてそこまでの確認はいたしておりません。
それに、もうそうした事は娘が嫌がりますので、娘を信用して…」

 私はお母さんから事情を聞くと、今度はカレンに……

 「カレン、まずは、お腹の中を空っぽにしてきた方がいいな。
鞭はそれからにしよう」

 すると、カレンの顔がほんの一瞬だけ曇った。

 その一瞬の表情を私は逃さない。
 『あれは嘘をついている目だな、困ったものだ』

 すると、すぐに気を取り直したカレンが自信をもって……
 「大丈夫です。家でやってきましたから」
 と、宣言はしたものの、私は信じなかった。

 妙に高いトーンの声。顔だって、まるで道化師が観客に見せる
ような不自然な笑顔だ。高校生といっても実質は中学生のカレン、
嘘はまだまだ下手だった。

 実は、さっきの懺悔室で、カレンの身体に変化が起きている事
に私は気づいていた。
 懺悔室は夏でも冷ややか。そこに長い時間膝まづいていれば、
たとえ家で用を足して来ても、新たに生理現象が起こる事だって
十分ありえる。

 そこで、こうやって懺悔に出向く時は事前にトイレへ行くだけ
でなく、浣腸を使ってお腹の中を完全に空にしておく必要がある
のだが、カレンはそうした約束を守ってはいないようだった。

 年頃の女の子にとってお浣腸はたとえ誰が見てなくても恥ずか
しいもの。できれば避けたい行為なわけだから、幼い頃のように
親が手伝わなくなると、これ幸いとばかりに、やった振りをして
逃げる子も少なくなかった。

 「やりました。ちゃんとお浣腸でトイレをすませましたから」

 そんな親への嘘、私への嘘を隠すかのように、カレンは懺悔室
の時とはうって変わって明るく振舞おうとしている。
 その不自然な明るさが、かえって大人たちには『これ、嘘です』
と言っているようなものだったのである。

 「いや!」
 突然、カレンが悲鳴をあげる。

 原因は、マーサが場の雰囲気を察してカレンの背中に回り込み、
その薄い胸を羽交い絞めにしたためだった。

 私はマーサの機転に反応してカレンのスカートを捲り上げると
その下腹をショーツの上から揉んでみる。

 こんなこと、よその村の子にやったら大暴れかもしれないが、
カレンに限らず幼い頃から厳しく躾けられているこの村の子は、
ここで暴れたらどうなるか、その先のことまで知っていたから、
おとなしく私の右手の侵入を許すのだった。

 「しょうのない子だ。こんなに膀胱が張ってるじゃないか」
 強く握った右手の感触が張り詰めた膀胱の様子を私に伝える。

 予想通りだった。カレンは今の今でもオシッコに行きたいはず。
そんな膀胱の様子だった。このまま鞭によるお尻叩きを行えば、
失禁は間違いないところだったのである。

 「いいからオシッコに行ってきなさい。……マーサ、手伝って
あげなさい」

 私がこう言うと、カレンは顔を真っ青にして珍しく暴れる。
 それはこれから隣の部屋で起こる出来事が半端なくおぞましい
事だと知っているからだった。

 「いやあ~~やめて~~ごめんなさい、もうしませんから~~」
 まるで幼女のような諦めの悪い声が天井に反響して響き渡る。

 カレンの母親は、貫禄十分のマーサに細身の身体を押さえつけ
られ、まるで人買いにでもさらわれるかのようにして隣の部屋に
消えていく娘を複雑な表情で見送ると、あらためて、私に詫びを
入れてきた。

 「申し訳ありません、司祭様。私はてっきりあの子がお浣腸を
済ませて家を出たものだと思っておりましたから……」

 「いや、娘さんも15歳ですから、今が恥ずかしい盛りです。
お浣腸のような恥ずかしいこと、やりたくないと思うのは、当然
ですよ。……ただ……」

 私は言葉の最後で母親の顔色を探る。
 一瞬だが、彼女と目と目を合わせて、この先どうするかを尋ね
たのだ。

 答えはどうやら『お願いします』ということのようだった。
 何がお願いしますなのか……

 「ただ、こうした事は『カレンを慈しみ育てよ』との神の命に
背くことになりますからね、あなたにも少なからず罪はあるわけ
です。承知いただけますか?」
 私は母親に向かって意味深に問いかけた。

 「承知しております。どうか、存分のお仕置きをお願いします。
司祭様のお力で邪悪で怠惰な私の魂をお救いいくださいまし……」
 母親は私の足元に膝まづくと神への許しを請う。

 実は、懺悔聴聞は何も子供だけのものではない。むしろ保護者
である大人たちにとってそれは重要だった。

 子供の頃から親といわず教師といわず厳しいお仕置きを受けて
育った村人たちの中には、大人になってお仕置きから開放された
あとも、刺激の少ない日常生活に物足りなさを感じる人が少なく
ない。

 特に婦人の場合は、更年期を迎えて夫に相手にされなくなると
急に寂しさを覚え、誰かにかまって欲しくなるが、私たちの宗派
では不倫は大罪。そんなことがばれたら、村の辻にある晒し台に
一週間も裸で立たされ、朝昼晩と一日三回、自分の歳の数だけ鞭
打たれるはめになるから、火遊びをやるには、それなりの覚悟が
必要だったのである。

 ただ、そんな危険なことまではできないが、さりとて、単調な
生活に何らかの刺激は欲しいと思っている人は多いわけで……。
 そこで思いつくのが、子供の頃あれほどイヤだったお仕置きを
あえて受けてみようということ。

 実際、この村ではそんなアバンチュールを求めて懺悔聴聞僧を
口説くご婦人が少なくなかったのである。

 私も、本来は子供からのみ懺悔を受けつける若年聴聞僧だが、
求められれば婦人の悩みにも答えるようになっていた。

 『はて?このカレンの母親も、あえてカレンがお浣腸を逃げる
ように仕向けていたのではないだろうか』
 私はそんな疑念すら持ったのである。

 「ここへ……」
 私は母親に鞭打ち用のテーブルを指し示す。

 うつ伏せになった母親はカレンとは違う大人の体。ペチコート
ごとスカートを巻くり上げると、そこにたっぷり脂の乗ったお尻
がいきなり現れる。おまけに、数日前、おそらくは夫から受けた
であろう鞭傷が、そこにまだ生々しく残っていた。

 「神の御名において、Marie・Fujishimaに取り
付く悪魔の魔の手を取り払わん。神より授かりし麗しき魂の永遠
なれ」
 私は、こう言ってケインを振り下ろした。

 「ピシッ!!!」

 「ああああああっ」

 鞭は甲高く天井に響き、アンナの苦痛は低く重く床を這う。

 もちろん、これがカレンならこんなに強くは叩かないが、母は
娘時代から色んな場所で色んな人からこんな鞭を山ほど授かって
大人になっている。
 私が思い切り打ち据えてみたところで、蚊に刺されたほどにも
感じていないはずなのだ。

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 「ピシッ!!!」
 「ああああああっ」

 私は私なりに力を込めて、まるで大きな座布団のようなアンナ
のお尻を打ち据え、アンナもそれを受けて、大儀そうで苦しそう
なうめき声をあげ続けてくれる。

 しかし、それは私の鞭によってそうなったというより、辛く、
恥ずかしかった娘時代を思い起こす呼び水として私から何らかの
刺激を受けたかったということだろう。

 幼き日に受けたお仕置きの思い出が快楽の源泉となっているの
は村の中にあって何も彼女だけではない。

 真理絵はこのまま家に帰れば、夫にさらなる鞭を願うかもしれ
ないし、あるいは一人でオナニーにふけるかもしれない。
 しかし、これはあくまで分別のある大人たちの遊びであって、
私もその奉仕者の一人にすぎないのだ。
 もちろん私たちの宗派にあって、これは罪ではなかった。

 ただ、それはあくまで幾多の試練を乗り越えて成人した大人の
お話。まだ分別のないカレンがそれを求めることはできない。
 彼女は、まだ自分の心をコントロールする訓練を受けなければ
ならない身。つまり教育を受ける身なのだ。

 だから大人の楽しみをフライングして望むようなことがあれば
悲劇はさらに増幅されることになる。

 「いやあ~~もうだめえ~~出ちゃう、もう出ちゃうから~」
 真理絵への奉仕が終わる頃、カレンの悲痛な声がドアの向こう
から漏れてくる。

 「では、参りましょうか」
 私はほんの少し上気した顔の真理絵の手をとってテーブルから
下ろすと、一緒に娘の待つ部屋へと向かう。

 そこで、今、何が行われているか、私も、アンナも、もちろん
承知のうえのことだった。

 カレンのいる部屋は『浣腸部屋』と呼ばれて、文字通りお浣腸
を行うための部屋。イチヂク浣腸に始まり、まるで大きな注射器
のようなピストン式浣腸器や水枕のようものを高く吊るして行う
イルリガートル(高圧浣腸器)ってのもある。

 多種多様な器具と液剤。仰向け、うつ伏せ、つるし上げ…など
どんな体位にも体を固定できる内診台やベッド、滑車なども備え
つけられていて、一度ここで痛い目に遭った子は、二度目は部屋
のドアを見て泣き出すと言われるほどだった。

 見れば、カレンはすでに浣腸を終えて壁に向かって抱きついて
いる。便意を我慢させる方法も色々あって必ずしも体を固定させ
るわけではないが、恐らくマーサが、私とカレンの会話から気を
利かせて厳しい処置をとったのだろう。
 大きなオムツのほかは何も身につけず、壁の前に膝まづくと、
両手を水平にして一杯に伸ばしたところで、手首を革のベルトで
固定されている。

 さながら壁を抱くような姿勢で必死に便意に耐えているのだ。

 カレンは、私たちが部屋の中に入って来たことは承知していた
だろうが、とても挨拶のできる雰囲気ではなかったのである。

 「どのくらい経つね?」

 私はマーサに尋ねると……。
 マーサの答えは……

 「12分です」

 「おう、よく頑張ってるじゃないか。三年前は速攻でお漏らし
したから、この子はよほど肝が据わっているのか、それともまだ
羞恥心が芽生えていないのかって、逆に驚いたりもしたものだが、
こうしてこみると、人並みに羞恥心が育ってるみたいだな。……
いや、なによりだ」

 私はカレンが嫌がる言葉をあえて使って様子を見た。
 長年の経験のなせる業だろうか、子供たちの心のうちはたとえ
顔を見ずともわかってしまう。とりわけその子が改心しているか
どうかは褒め言葉ではわからないが、腐るようなことを言われる
と、その子の本心がでる。

 こんな取り込んだ中でも冷静に私の言葉を聞いているカレンの
後姿は私の基準では合格だった。

 ただ、この浣腸は私たちの世界ではそれ自体お仕置きではない。

 あくまでお仕置きの前にお腹を空にして粗相が起きないように
つとめるのが目的なのだが、子どもたちにとっては、恥ずかしさ、
不快感、苦痛など、大人たちに監視されながら強烈な下痢と戦わ
なければならないのだから、これはもうお仕置きの一部、避けら
れるものなら避けたいと思うのが人情というものだ。

 私はそうやって大人たちの理不尽と戦っているカレンの処へと
近づく。
 しかし、それは励ましではない。彼女にとっては残酷な宣言を
伝えるためだった。 でも、役目柄、仕方がなかったのである。

 「カレン、さあ、もういいよ。出してしまいましょう。あまり
長いことやってると、体に悪いから……」

 私が膝まづいた少女の耳元でささやくと……

 「トイレ、トイレ、トイレに行きたいんです。お願いします」

 それは哀願というべきだろう、弱弱しい声だった。
 少し前ならそれももっと大きな声で叫んでいたかもしれないが、
今はそれすらできない状況にあるのだ。

 何をしても、ちょっとした刺激でもそれは噴き出してしまうの
だから……

 しかし、私はさらに残酷なことを言わなければならない。
 「もう、オムツを脱ぐ余裕はないんだ。…………ね、このまま
オムツにやってしまおう。マーサもお母様もいらっしゃる、後は
みんなで手伝ってあげるから」

 こう語りかけたが……

 「いや、絶対にいや!独りでやります!」
 首を振り、できる限りの声を上げ、全身を震わせて嫌がる。

 もちろん、これはカレンにとって譲れない希望なのだろうが、
私もまたそれを認めるわけにはいかなかった。
 というのも、カレンには新たに罪が発生しているからだ。

 「そう、なら言うけどね、カレン。この村では嘘つきは泥棒と
同じ罰を受けるのは知ってるよね。この村は外の世界と比べても
とりわけ嘘には厳格なんだ。ついて良い嘘は他の人を守る時だけ。
自分を守る為の嘘は絶対にだめだって、君のお尻にも書いてある
はずだよ。このことでは大半の子がそれで親や先生や私にお尻を
ぶたれた経験があるはずだから」

 「うん」
 カレンは小さく頷いた。

 「カレン、君におトイレを使わせてあげせれないのは、さっき
君が『おトイレは浣腸を使って済ませてきました』って私に嘘を
ついたからだ。鞭を増やしてもいいけど、女の子のお尻をあまり
傷つけたくないからね。こちらにしたんだ。君ならそこの処は、
分かってくれるとおもったんだが、君もまだ子供だな」

 「…………」
 カレンは口惜しそうに下唇を噛むと、私とは反対側を向く。

 それは一見すると改悛の表情のようにも見えるが、特に女の子
の場合、それは『何とか言い逃れる方法はないか』と、この期に
及んでも必死に頭を巡らせている場合がほとんどだった。
 そのあたりカレンとて女の子の例外ではないだろう。

 ただ、平静な時ならそこで何か思いつくのかもしれないが、今
の今、彼女に妙案など浮かぶはずがなかった。とにかく今は一秒
一秒が貴重なのだ。我なんて通してる暇はなかったのである。

 『もし爆発しら……』
 そう考えると、身の毛がよだつ。女の子にとっては、この世の
終わりにも匹敵する出来事が待っているのだ。妥協できるものは
全て妥協してでも惨めな姿だけは見られたくない。
 今はそう思っているに違いなかった。

 大半の子がこれをお仕置きだと判断するように、カレンもそう
判断するだろうと思い、私はマーサに、『グリセリンはたっぷり、
オムツも大きなものを穿かせなさい』と命じたのだった。

 女の子は表面上は順法精神で柳に風とばかり何にでも迎合する
ように見えるが、実は芯の部分は男の子以上にしっかりしている。
 SMチックで残酷に見えても、『お互いに嘘や隠し事はしない』
という村の大事な掟を女の子に徹底させる為には、多少の荒療治
もやむを得ないというのが昔から判断だった。

 そう、ここでは世間とは扱いが逆、女の子の方が、男の子より
むしろ受ける罰が厳しかったのである。

 私は、カレンの下腹を鷲づかみにして揉みあげる。
 せっかくの苦労を無にして申し訳なかったが、仕方がない。

 「いやあ、やめてえ~~~だめえ~~~~」

 カレンの悲鳴が悲しく部屋の天井に共鳴して決着はついた。
 その音、その匂い、オムツが膨らんでいく様を見れば、そこで
何が起こったかは語る必要がないだろう。

 最後はカレンの全身の筋肉が緩み、両手を戒めていた革ベルト
によって、その体がかろうじて支えられるまでになった。

 「では、マーサ、後片付けをお願いします。お母様もよければ
着替えを手伝ってあげてください。私は、お仕置きの準備があり
ますので、これで失礼します」

 私はそう言って部屋をでる。
 もちろん、私がカレンの世話を焼いてもいいのだが、さすがに
去勢されているとはいえ、男である私がその場に居合わせては、
カレンの心も必要以上に傷つくだろうから私は浣腸部屋を離れた
のである。

 『幼年懺悔聴聞僧はロリコン野郎の成れの果て』なんて陰口を
よく耳にするが、幼年聴聞僧は決して勝手気ままに鞭を振るって
いる訳ではない。子どもの心理をしっかり読んで的確なお仕置き
を与えて、その子を立派な村の一員に育てあげる。平和な村には
なくてはならない存在なのだ。
 去勢されたうえに下積みだけでも十年もかかるこの仕事は成れ
の果てがやるには結構大変な仕事でもあるのだ。

************************

僕が小説を書いてるわけ

 私が日頃『本当は子供の頃お仕置きの経験がほとんどなかった』なんて
吹聴してるものだから、へぇー品行方正だったんですね。なんて言われる
けど、事実はそうじゃなくて、単に気が小さいだけなの。
 スカートめくりは好きだけど、自分じゃやらなくて、他の子にやらせて後ろ
からそれを見ているような、そんな破廉恥漢だった。
 実際、理由はともかくお仕置きの経験がほとんどないものだから、僕に
とってお仕置きは一種のあこがれ。戦争映画やヤクザ映画に興奮して
映画館を出てくる人たちと同じ心理状態だったんだ。
 たまに勇気を振り絞って他の子みたいに悪さをしてみようって思い立つ
んだけど、いざとなると怖じけづいちゃう。そんな情けない事の繰り返し
だったんだ。
 というわけで、どうせできないなら、夢で叶えちゃおうと始めたのが
この小説というわけです。
 ちなみに僕の親は自由放任だったけど、当時、こんな家庭は珍しくて、
親はまだまだ怖い存在。お仕置きなんてどこでも日常茶飯事だったから
ネタには困らなかった。

Appendix

このブログについて

tutomukurakawa

Author:tutomukurakawa
子供時代の『お仕置き』をめぐる
エッセーや小説、もろもろの雑文
を置いておくために創りました。
他に適当な分野がないので、
「R18」に置いてはいますが、
扇情的な表現は苦手なので、
そのむきで期待される方には
がっかりなブログだと思います。

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